開業遅れる「北部メディカル」 無床・外来も模索


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2014年4月に開院予定だった地域医療施設「北部メディカルクリニック」=2日、金武町の米軍ギンバル訓練場跡地

 金武町の米軍ギンバル訓練場跡地に、2014年4月に開院予定だった地域医療施設「北部メディカルクリニック」が、開院予定日から1年3カ月を経過しても管理運営する医療法人が決まらないまま難航している。真新しい建物とは対照的に、植え込みの雑草は伸びたままだ。防衛省からの補助金約30億円を活用した町の事業で、このまま開業できない状態が続けば補助金の返還を余儀なくされる可能性がある。町議会は8日に予定する審査特別委員会(伊芸孝委員長)で町と議論を重ね、問題解決に向けた糸口をつかむ。

◆かさむ高額維持費
 当初は北部病院(宜野座村)を運営する医療法人「ほくと会」(宮城一文理事長)が契約していたが、複数の医療法違反で町が14年10月末で契約を解除した。
 町は維持管理費として14年11月から15年6月末までに総額約7200万円を計上している。町議会6月定例会では7~9月の維持管理費約2500万円の一般会計補正予算案を可決した。維持管理費がかさみ続けることや防衛省への補助金返還のリスクから、どうにかして開業を急ぎたい考えだ。
 町議会臨時会はことし6月、新管理運営者として町が提案した都内の医療法人と医療系企業の両者を選定するか審議した。しかし、業者評価の手続きや開業後の経営面などに対する疑問が相次ぎ、結論が出ないまま審査特別委員会を設置し、審議を継続している。

◆最悪のシナリオ
 「北部メディカルクリニック」は当初、19床の病床で開業する予定だった。しかし、金武町を含む「中部医療圏」は基準病床数3370床に既に達しているため、同医療圏内の医療施設から病床を融通するなどしない限り原則として病床を設置できない。「このまま開業できずに補助金返還」という最悪のシナリオを避けようと、病床のない外来医療機関としての開業も模索されている。
 防衛省の補助金には19の病床や入院関連設備の予算も含まれている。そのため、もし病床なしで開業する場合、病床などに充てられた予算分の返還義務が懸念される。町は「返還金を発生させないよう(当事者である)国や管理者と調整していく」と話すが、具体的な道筋はこれからだ。
(長浜良起)