『あきらめましょう』以降こそが聞きどころ
20周年ベスト。その芸歴の半数近くはトラブルで休んでいたのに実に濃厚。また、シングルを発売順に並べただけでもドラマがある。
前半13曲が小室哲哉の詞曲だが、内気な女性が愛と夢を叶える作風から徐々に不調和気味な曲想や歌唱に変わり、以降も数作は不安定な歌唱でハラハラする。
しかし、売り上げが一段落した21作目の『あきらめましょう』以降こそが聞きどころ。特に『あなたがいれば』などバラードがうまくなり、近年の『夢やぶれて』のようなダイナミックな歌唱の布石だったと気付く。
それにしても、自作詞は勿論、秋元康や中島みゆきの提供作でも、自身の失恋や挫折を何度も歌の題材にしていること、そして何度も這い上がる機会を得ていることにあらためて驚く。ゆえに、ラスト収録の『Long way to go』での、歌い続けたいという切なる歌声に一貫したプロ根性を感じた。本作から、誰かの協力を得るためには、心をさらけ出すことが大切だと思えるはず。
(ユニバーサル・2CD+DVD初回盤4444円+税、2CD通常盤3333円+税)=つのはず誠
(共同通信)
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つのはず誠のプロフィル
つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、広告代理店勤務を経て、T2U音楽研究所を設立。音楽市場分析のほか、音楽配信サイトやオムニバスCDの選曲を手がける。
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