古酒の郷構想に暗雲 資金不足で建設遅れ


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琉球泡盛古酒の郷の当初のイメージ図(上)。下は琉球泡盛古酒の郷。施設建設が始まらず雑草が生えている=9日、うるま市の国際物流拠点産業集積地域

 泡盛の販路拡大戦略として建設された「琉球泡盛古酒(クース)の郷(さと)」が、管理・運営する協同組合の資金不足などで、当初計画していた泡盛博物館や泡盛を貯蔵する施設の建設が遅れていることが分かった。建設の遅れに伴い、10年間で古酒2500キロリットルを貯蔵する計画が事実上不可能となった。泡盛の出荷量が減少を続ける中、古酒をブランド戦略として位置付ける構想に陰りが見え、泡盛の消費拡大にも影響を与えそうだ。

 古酒の郷は2013年、県内の泡盛メーカー43社が共同出資する協同組合琉球泡盛古酒の郷(さと)がうるま市の国際物流拠点産業集積地域に建設した。貯蔵施設の2棟目以降の整備が遅れている背景には、協同組合の資金不足がある。組合の又吉良秀専務理事は「各酒造所の経営状況が厳しい。組合員が拠出できない現状がある」と話す。
 古酒は貯蔵に時間がかかるため、建設が遅れれば遅れるほど、十分な量の古酒が確保できなくなる。構想は、約6400平方メートルの敷地に泡盛の貯蔵用施設を5棟建設、1棟ごとに容量50キロリットルのタンクを10本整備し毎年500キロリットルの泡盛を貯蔵、開所から10年で2500キロリットルになる予定だった。現在、貯蔵用施設1棟には、375キロリットルが貯蔵されているだけだ。
 組合は「経営状況の変化を受け、2棟目の着工のために環境整備をしている段階だ」と話すが、見通しは立たない。古酒を販路拡大戦略の中核に位置付けた計画が頓挫しかねず、今後の消費量にも影響しそうだ。(阪口彩子)

<用語>琉球泡盛古酒(クース)の郷(さと)
 琉球泡盛の古酒ブランド確立を目指し、県内の43酒造所が出資して建設した複合施設。泡盛を長期間貯蔵する施設や管理棟、博物館を設けて泡盛の拠点施設となるよう計画された。県内の泡盛酒造所は小規模零細企業が多く、個別の酒造所ごとで販路拡大に取り組むには限界があった。こうした背景から、業界総ぐるみで取り組むため、08年に協同組合を設立した。現在は県内46酒造所のうち3酒造所が組合に未加入。