2ndシングルは大器の証拠?
中学のバンドから10年以上を経てデビューした女性シンガー・ソングライターの2nd。今年の新曲とは思えぬほど、どこか“既聴感”があるが、決して古めかしくもなく、これこそが大器の証拠かもしれない。
表題曲は、淡い恋心を歌ったミディアムチューン。夏に合う爽快な歌声も良いが、「海の匂いがする路面電車」や「花が咲いた瞳から涙滲んでた」など、一瞬を切り取ったような情景描写が見事。初期の岡村孝子を聞くような感覚。
カップリングは、打ちこみ音や裏声がより涼しげにさせる『Summer of Love』と、バンドサウンドと日本語だけの歌詞がどこか“はっぴいえんど”的な『赤いスニーカー』を収録。日記調の歌詞とは対照的に、3曲とも一人称が“僕”なのも、実は大きな個性だと気付いた。
初回盤の16ページブックレットに笑顔が1つもないのも、逆に音楽を深掘りしたくなって効果的。本作を聞けば、夏ならではの繊細な感情を追体験したくなるはず。
(ソニー・CD+DVD初回盤1389円+税、通常盤1204円+税)=つのはず誠
(共同通信)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
つのはず誠のプロフィル
つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、広告代理店勤務を経て、T2U音楽研究所を設立。音楽市場分析のほか、音楽配信サイトやオムニバスCDの選曲を手がける。