81年普天間で「有毒物質と接触」 米元将校の健康被害を補償


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クリス・ロバーツ氏

 1981年に米軍普天間飛行場内に埋められたドラム缶約100本を撤去する作業に携わったことが原因で、前立腺がんを患ったとして、米退役軍人省に補償を求めていた元米海兵隊中佐のクリス・ロバーツ氏(61)=現ニューハンプシャー州議員=に対し、同省が因果関係を認め、補償を決めたことが分かった。

英字紙ジャパン・タイムズ(17日付)が報じた。ロバーツ氏は本紙の取材に、接触した物質は米軍がベトナム戦争で用いた猛毒の枯れ葉剤だと説明していた。退役軍人省は原因物質の特定は避けたが、ロバーツ氏の症状は「有害物質への暴露が原因」だと認めた。
 枯れ葉剤にさらされたことが原因だとして元沖縄駐留米兵が健康被害の救済を求めた事例で、退役軍人省が補償を認めた例は過去に4件(場所は北部訓練場や那覇軍港など)が公になっているが、普天間飛行場の事例は初。同省はロバーツ氏の証言や症状、本人が保管していたドラム缶発見時の現場写真などから因果関係を認めたという。
 ロバーツ氏は普天間飛行場の施設管理者だった。2013年の本紙の取材に対し、1981年夏、滑走路北側近くの水質調査で化学物質反応が測定されたことをきっかけに、ドラム缶約100本が地中から発見されたと証言している。このうちいくつかは、当時米軍で枯れ葉剤入りのドラム缶であることを示したオレンジの縞(しま)模様が胴体に入っていたという。
 ロバーツ氏はドラム缶の撤去に携わったほか、発見約2週間後に沖縄に台風が襲来し、その対策をする際に、ドラム缶が埋められていた場所にできた水たまりに数時間漬かったと証言している。
 帰国後の85年に突然失神し、その後約20種のアレルギーや前立腺がんを相次いで発症した。2012年、退役軍人省の専門医に、症状について「枯れ葉剤との接触が原因と思われる」と告げられ、同省に事実認定と補償を求めていた。
 米国防総省は沖縄での枯れ葉剤の貯蔵や使用を示す記録はないとしている。