「DVD=3」吉川晃司『“SINGLES+RETURNS”』


社会
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『KIKKAWA KOJI 30th Anniversary Live “SINGLES+RETURNS”』
「等身大」の男前!アクシデントを乗り越えた熱演と、素の魅力にクラリ

 2014年から行われた、吉川晃司30周年集大成ツアー。その追加公演として行われたライブハウスツアーのなかから、Zepp Namba公演の模様を収録。ボーナス映像には彼のインタビューと、バックステージの様子が収められている。

 正直に言おう。幼き日、苦手な男性スターが2人いた。1人は当時『スター・ウォーズ』に出演していたハリソン・フォード、そしてもう一人は吉川晃司だった。今ならわかる、子どもごころに、彼らのあふれる色気に戸惑っていたのだ。
 しかし本作。白髪交じりの髪で黒の皮パンを履きこなし、歌う彼はとても魅力的だ。なんとこの公演の直前に左足首を骨折するというアクシデントに見舞われ、傍らに杖を置いた状態。にもかかわらず、衰えぬ力強い声量、迫力のライブパフォーマンスに、責任と意志を胸に抱く大人の男の姿を見た。ついていきたい…。
 ボーナス映像で見せる「素」の語りも良い。30年というキャリアを経て「『等身大がいいな』と思えるようになってきた」と話すとおり、視力の衰え(老眼…)も、ふきのとうに心ひかれる、おじいちゃんみたいな(失礼!)一面も隠さない。かなりの時間をさいて、ライブのバンドメンバー一人ひとりを紹介する構成になっているのも、心遣いが見えてなんだか素敵。スターだけれど親しみを覚える、その絶妙な距離感はやっぱりプロそのものだ。30年前からこの先もずっと、「吉川晃司」でいつづけられる人なのだろう。
 (ワーナーミュージックジャパン・5500円+税)=玉木美企子
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玉木美企子のプロフィル
 たまき・みきこ 1977年生まれ。ライター/編集者。出版社での雑誌編集、ラジオ構成作家等を経て、現在は食や農にまつわる広告・媒体制作を中心に活動。音楽の琴線は歌声、歌詞、そして太鼓やピアノなどの「音」を聴くこと。2015年より拠点を東京から長野へと移す。
(共同通信)

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