<市制施行10周年 未来広がるばんたがみゃーく・我々の宮古島>下


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天然ガスの試掘開始ボタンを押す関係者ら =2013年8月、宮古島市城辺保良

 生活に使う水のほとんどを地下水に頼ることなどから、環境保全意識が高い宮古島。市は2008年から「エコアイランド」づくりを標ぼうして環境施策に力を注いでいる。関連事業は巨額を投じた実証実験から、地元ケーブルテレビによる特撮番組「雷神!ミエルカ」の制作・放送を通した意識啓発など多岐にわたる。宮古島の取り組みに世界の注目が集まっている。

 サトウキビ畑が広がる市下地上地に「バイオエタノール製造施設」が建つ。基幹作物のサトウキビを搾った後に残る廃糖蜜を活用しエタノールを作る工場で、生成物をガソリンに3%混ぜて「E3燃料」として販売する。エタノール生成後の残さも液肥として販売し農産物増産につなげるなど、環境循環型社会構築に向けた取り組みが進む。
 全島のエネルギー消費状況を可視化し、再生可能エネルギーの最適な消費に向けたシステムの構築を目指す「全島エネルギーマネジメントシステム実証事業」なども展開された。小規模離島でのスマートコミュニティー実現に向けた実証事業は他に例がなく、識者からは「宮古島でうまくいけば他の島嶼(とうしょ)地域にも展開できる」などと高い評価を受ける。宮古島へは昨年度、国内外から約130の個人・団体が視察に訪れており、他に例を見ない取り組みは注目の的だ。
 そんな宮古島で今、新たなエネルギー源として天然ガスが注目を集めている。県が2013年度に市城辺保良で実施した試掘調査で、少なくとも1日618キロリットルの温泉水や530立方メートルの天然ガス産出を確認した。これらを活用したタラソテラピーなどのリゾート開発や自動車用燃料への応用が期待できる。
 また温水を生かして火をたかずに農業用ハウスを温め、マンゴーなど野菜果樹の成長を調整することも見込まれる。天然ガスと、農業や観光業を組み合わせて新たな付加価値を生み、効率的な環境産業につながると期待が高まる。
 下地敏彦宮古島市長は「宮古島発の環境モデルが世界を救う日が、もうすぐ来るかもしれない」と展望し、宮古発の環境施策が世界中で花開く日に期待を込めている。(知念征尚)
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 新報移動編集局「宮古島ウイーク」地域づくりフォーラム「地域資源を活用した宮古島の可能性」は、30日午後1時半から宮古島市のマティダ市民劇場で開催する。