「オモリだけ」で釣る 同時に2匹の大物も


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 26日、辺土名漁港を出港した「氷川丸」は船首を辺戸岬へと向けた。大阪から遠征してきたアングラー2人を乗せてのGTフィッシングである。風、潮流、そして海底の地形を的確に読んで、キャストポイントをアングラーへ伝えるのは船長の玉村和也さん。素潜り漁を生業とする彼は、この海域の地形を細部まで把握する頼れる水先案内人である。ボート上のアングラーがポイントへルアーを打ち込んでいく中、船長が取り出したのはライトジギングのタックル。
 「ここは底物もよく釣れるんですよ」と笑顔で小気味よくジグをシャクリ始めた。するといきなりロッドを弓なりに曲げて1キロはあろうかという良型のオジサンが上がってきた。
 ファーストフィッシュを写真に収めようと私はカメラを構えた。そしてファインダーを通して見た「想定外」の画像に私は目を疑った。魚の口元にぶら下がっているのはメタルジグではなく、なんとただのオモリではないか。玉村船長は投げ釣りに多用されるホゴシンカーと呼ばれる棒状のオモリや、船釣り用の胴突きオモリに針を付けてジグの代替品としていたのだ。
 あぜんとする私に「これ(オモリ)だけでも結構釣れますよ」と彼は数種類のオモリを見せてくれた。ヤスリで側面を削ったものや、マニキュアでペイントされたものなどもあるが、どこから見てもただの鉛であった。
 その後も玉村船長は、一つ千数百円のジグをしゃくり続ける私を尻目に順調に釣果を伸ばしていった。最後のポイントでは彼のルアーに今までにない大きなアタリがきた。「重い! デカイかもしれない」。そう言って慎重なファイトで釣り上げたのは、アカジンとジセーミーバイの2匹の魚。オモリに付けられた二つの針に異なる魚が同時に食い付いたのだ。魚を釣るために開発されたルアーが、単に仕掛けを沈めるための漁具に釣り負けるとは、いやはや恐れ入った次第であった。

【釣り大会案内】
 ◎県知事旗争奪沖釣り大会第30回沖縄県釣りクラブ対抗沖釣り大会 9月23日(日)慶良間、伊江島沖で繰り広げられる。競技は大物賞、重量賞。個人参加、釣り船の持ち込み参加も可。問い合わせは090(1943)9102。
 ◎第3回カーエー・タマン王座決定戦 低気圧の影響で順延になった日本釣振興会沖縄県支部主催、第3回カーエー・タマン王座決定戦は、9月14日(金)から16日(日)の3日間の日程で行われる。カーエー部門と、タマン部門で沖縄一を決定する注目の大会。参加希望者は日釣振加盟の各釣具店へ。
 ◎日釣振ファミリー釣り大会 9月16日、宜野湾新漁港を舞台にファミリー釣り大会が催される。同大会は釣りを通して海に親しみ、その環境について理解を深め責任ある行動を身に付けようというもの。家族単位での参加となり、大会終了後は清掃とタマンの稚魚の放流が行われる。お申し込みは日釣振加盟の各釣具店。

【各地の釣果】
◎強烈な引きの正体は?
 18日、釣りクラブ磯吉に所属する安里敦さんは、カーエーが釣れている前兼久漁港へ出掛けた。日が沈み、あきらめかけた19時3分にヒット。右に左に走る魚は大物の手応え。「本命か? いや引き方がどうも違う。シャクチか?」。それにしてはスピード感があった。ギャラリーも集まり、勝手に「ガーラだ。カーエーだ」と言い始めた。やっとの思いで手元に寄せた魚は細長かった。「なんだボラか」と外野から聞こえた。その声をベテランが打ち消した。「サバヒーだ。どうりで引くわけだ」人騒がせな魚の正体はサバヒーという魚であった。

【取材協力】氷川丸 玉村船長090(8838)5110。
 ご意見、ご要望をお寄せください。釣果写真、情報等も幅広く募集しております。
 (新報アングラーズペンクラブ・大城耕)

【写真説明】上から
(1)2本バリの付いたオモリを競うように襲った3キロ弱のアカジンと1・5キロほどのジセーミーバイ。してやったりの玉村船長
(2)オモリに釣られた1キロのオジサン
(3)ボラ似のサバヒーはスピードと馬力を合わせ持つ。釣り人は安里敦さん
(4)18日の23時、恩納村の海岸で64.5センチ、4.1キロのタマンを釣り上げた金城善隆さんファミリー
(5)連日好釣の那覇一文字。4キロ、70センチのスマガツオをキャッチしたのは玉城翼君(中央)。上原忠君(左)はカスミアジ、謝花優志君も大きなダツを釣り上げた
(6)休日になると各地を釣り歩く喜友名智恵美さんは、宜名真漁港でクルバニーアカジン52・5センチ、1・64キロをキャッチ