「場」を知り潮を読む 釣り師のこだわりと戦術


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 釣り師はことさら釣趣(ちょうしゅ)にこだわりを持っている。釣趣とは釣り方や釣り場の雰囲気を含めた味わいとか風情のことで、狭い意味では魚種ごとに変わってくるやりとりのことをいう。
 沖縄を代表するターゲットであるカーエー(ゴマアイゴ)とタマン(ハマフエフキ)の釣趣はまったく違う。サンゴの海に完ぺきに適応したタマンは昼夜を問わず、沖と磯の別もなく、浅深にも季節にも無頓着にあらゆるシチュエーションからサオを奪い去らんばかりにやって来る。しかし出合い頭で釣れた1匹をもってタマンを語り始めると、どっこい、ぽっかりと落とし穴が待っている。狙い通りにいつでも釣れる相手ではないのだ。
 一方のカーエーは最初の1匹を釣るのに哲学を必要とする。先輩のカーエー釣り師は皆それぞれにポリシーを持ち、観察から導きだした仕掛けや戦術が微妙に違う。カーエー狙いで漁港に通い、10回目で手にできれば早い方である。それだけに釣った喜びもひとしおである。琉球大学のアイゴ類研究家は、アイゴのことはまだ何も分かっていないのだと言う。
 さて今年も、カーエー・タマン沖縄王座決定戦が行われ、釣り師は自らの戦術を実地に移したのだが、仲秋の大潮を読み切った者が好釣果を得たようだ。王位についた2人の名人に必釣の秘訣(ひけつ)をうかがったところ、同じ答えが返ってきた。カーエー王者の上原さんも、タマン王者の外間さんも潮を読む大切さを指摘し、そして何よりも「釣り場に通うこと」と話したのである。

【各地の釣果】
 ◎カーエー・タマン王座決定戦
 9月28日から3日間の日程で繰り広げられた日釣振沖縄主催の第3回カーエー・タマン王座決定戦は、本島や周辺離島を中心にエントリー総数221人の激しい闘いとなった。その結果、釣歴30年の上原敏巳さんが1・94キロ、45・8センチでカーエーの部を制し王座を獲得、タマンの部は釣歴60年の大ベテランである外間良治さんが4・27キロ、69・5センチのタマンを釣って王座に輝いた。
 その他の結果は次の通り。(敬称略)
▽カーエーの部2位・棚原律(1・56キロ)、3位・山城幸光(1・56キロ)、4位・知念純也(1・55キロ)、5位・山城英久(1・18キロ)
▽タマンの部2位・中村宏人(3・98キロ)、3位・山城清友(3・14キロ)、4位・新里菊也(2・95キロ)、5位・比嘉周史(2・63キロ)
 ◎ファミリー釣り大会
 釣りを通して海に親しみ、その環境について理解を深めよう、というテーマで毎年開催される日釣振主催のファミリー釣り大会が9月30日、新宜野湾漁港に大勢のファミリーを招いて行われた。釣り競技の部では850グラムのボラを釣った恩納正気くんが優勝し、2位は同じくボラを釣った當山一平くん、3位はトカジャーを釣り上げた上地光くん、4位はガーラを釣った八幡勇作くん、5位はトカジャーを釣った米須嵩人くんが入賞を果たした。大会終了後にはおよそ5000匹のタマンの稚魚を放流し、釣り場環境と自然への理解を深めた。
 ◎先週に続きまたまた記録魚
 うるま市に住む仲田和幸さんの狙いは単純明快に20キロオーバーの大ガーラ。9月30日、通い慣れた石川漁港は野球場裏のポイントで冷凍アジを餌にブッ込み釣り。深夜0時15分、県記録確実となる全長122・5センチ、重量7・88キロのカライワシをヒットさせアッという間に引っこ抜いた。
 ご意見、ご要望をお寄せください。釣果写真、情報等も幅広く募集いたしております。
 (新報アングラーズペンクラブ・佐久川政一郎)

【写真説明 上から】
(1)カーエー王座についた上原敏巳さんのホームグラウンドは本部の海岸
(2)タマン王座についた外間良治さんのホームグラウンドは今帰仁海岸
(3)ファミリー大会が開催された新宜野湾漁港ではミジュンが釣れ盛り、連日大勢の釣り人でにぎわっている
(4)タマンの稚魚を放流し、自然のありがたさをちょっとだけ理解した子供たち
(5)県記録確実となるカライワシを釣った仲田和幸さん
(6)9月23日、伊江島沖の天久曽根で初めてのグルクン釣りを楽しむ原セツ子さんに船長の中村さんがカタカシの泳がせ仕掛けをセット。すると、6キロのオーマチがヒット。船上は大騒ぎに