【チャイナ網路】大圏仔


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 「大圏仔」なら70万円で殺しを引き受ける。しかも“仕事”が確実だというのがもっぱらのうわさだ。近年急増する、大陸密航者による殺人や誘拐などの凶悪犯罪。単なる刺客から首謀者へと変容しつつある現状を危ぐし、陳総統も先日、一斉取り締まりを宣言した。
 「大圏仔」とは、中国から香港に流入した犯罪者集団に対し、香港で付けられた呼称だ。元軍人や武装警官も少なくなく、冷酷非情な手口で知られる。密航ルートを使って現れ、犯行の数時間後にはかき消すように消える。犯罪記録など一切なく、警察には悪夢のような存在でもある。
 「圏(輪)」とは、「都会」を指す符丁とする説もあるが、中国国境を越えるべく、彼らがつかまって海を渡ったタイヤのチューブを指すという説もある。1980年代の広東から、福建、湖南、東北地方とその出身地も変わった。
 96年、桃園県知事公邸でわずか10分間の間に起こった、知事を含む8人の殺害事件。事件はいまだ解決を見ていないが、“処刑”とも称されるほど残虐で鮮やかな手口から「大圏仔」の犯行とみられている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)