【チャイナ網路】ハッカーと偵察九隊


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 「エープリルフールを国民の休日とする」。一昨年総統府のHPに、こんな“政府広報”を書き込み、政府を騒然とさせたハッカーがいる。犯人は、当時高校3年生の蘇柏榕。彼は今、取り調べを受けた刑事警察局偵察九隊で、アルバイトとして働いている。
 同隊は、コンピューター犯罪を専門に取り締まる、別名「サイバー・コップ」だ。コンピューターのエキスパートが集う部署だが、彼の仕事はファイル探しなど簡単な作業のみ。捜査に協力させるために、彼を採用したわけではない。
 幼少時から天才の片りんを見せたものの、数学以外には興味が持てず、大学入試では志望校入学に失敗。今年、大学入試センターをハッキングして情報を漏えいさせる事件を起こした。採用は、才能を正しく導くための教育的措置であり、“保護”の一環なのだ。
 同隊がこれまで“保護”してきたハッカーは5人。気難しい彼らと会話するため、パソコンを並べてチャットする。理解者であればこその発想だろう。かつてCIHウイルスで世界を震撼(しんかん)させた陳盈豪も、ここで更生している。
 (渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)