【チャイナ網路】冥界の融資事情


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 「金銀紙」や「紙銭」と称される祭祀(さいし)用の“通貨”には、さまざまな種類ある。最高神である玉皇大帝にささげる「天公金」から、比較的身分の低い神様用の「刈金」まで。人間用で葬儀に欠かせないのが「庫銭」だ。その背景に死生観がうかがえて、おもしろい。
 人はこの世に生まれる前、転生のためにあの世で借金をしてきた、と信じられている。「庫銭」とは死後、冥府(めいふ)に返す返済金。通貨単位は不明だが、干支ごとの融資担当者と返済額はちゃんと決まっている。
 台湾中北部の言い伝えによると、田大夫が融資を担当した丑(うし)年の人の負債が最も多くて38万。以下、許大夫担当の午(うま)年が36万、雷大夫担当の寅(とら)年が20万と続く。最も安く転生できたのは、杜大夫担当の申(さる)年で、8万なのだそうだ。
 実際の「庫銭」は、黄色い紙をポケットティッシュ大に折って重ね、紙の帯をした包みで、1包35円前後。陰界では1包1万に換算される。十数万円分用意するのが今の相場だが、多く返せば子孫が恩恵を受けるとされるため、中には数百万円分を数日かけて燃やす金持ちもいるのだそうだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)