【島人の目】又吉喜美枝/伝統美の継承


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 新聞社勤務のころ、“硬軟”含め女性一般に関することを担当していた時期があった。1990年前後のことで、なぜか、ファッションもその一つで地元のデザイナーの方々とも、お付き合いさせていただいた。
 当時、沖縄の伝統工芸である織りや染めを現代風に生かした(洋装)作品が多く発表されていた。洗練されたものもあったが、だいたいが、試行錯誤している中での服作りで「伝統の良さを多くの人に知ってもらいたい」という情熱は伝わってきた。

 先月、パリで「プルミエール・クラス」という国際ファッション市があり、県関係者も2組が参加していた。そのうちの1組はカップルで、沖縄の紅型をエアブラシを用いて現代風にアレンジしていた。それが、すごくいいのだ。Tシャツ、パーカーなどに施された紅型は、うまくマッチして、おしゃれだ。事実、ファッション市での評価も高かった。
 奥さんのYさんは、デザイナーの娘さん。「若い人に紅型の良さを伝えたい」と語る。ご母堂も熱心に沖縄の伝統美を洋服に生かそうと、研究しておられた方だ。
 Yさんの話を聞き、取材していたころがパっとよみがえった。彼らの作品を手に取る。「すてきじゃない」。今度帰ったら買ってこよう、と思うものばかりだ。
 手法は違えども、「伝統の味を知ってもらいたい」という思いは同じ。2代目で、それが花開いたかと、ちょっとした感慨にひたった。(フランス通信員)