【交差点】自己主張の国


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 先日、夕飯の買い出しを―と近所の市場へ出掛けたときのこと。市場入り口が黒山の人だかりで、怒号らしき大声も聞こえた。何事かと思い、近づいてみたら、夫婦とおぼしき男女が人目もはばからず大声を張り上げ、けんかの真っ最中。不謹慎ながら好奇心には勝てず、私も黒山の一員となってじっくり観察してみることにした。
 現地方言でしゃべっているため、細かい内容までは分からないが、どうやら買い物最中でのささいなことが原因のようだ。互いに身ぶり手ぶりを織り交ぜ大声で自分の言い分のみを主張するため、会話がなかなかかみ合わない。そんなことはおかまいなしに延々と主張を続ける。なぜなら、ここで相手の会話に乗ってしまうことはすなわち相手に付け入るすきを与えることでもあり、自分にとって不利な状況に変わってしまう恐れがあるからだ。
 中国でよく見掛ける町中での口げんかは「いかに自分の主張を通し、ギャラリーを味方につけるか」によって勝敗が決まると言っても過言ではない。
 国民性なのか、私も含め日本人は強引な自己主張を良く思わない傾向がある。しかし、最近の国際情勢(特にアジアを中心とした)や自身の仕事を通じ、自分の考えや自国の文化というものは、もちろん常識的な状況を踏まえた上ではあるが、こちら側から強く主張しない限り伝わらないのではないか? いささか極論ではあるが、そう感じた。
 (吉元耕己・中国沖縄民間大使)