【交差点】平和を願う


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 インドやタイで大きな被害が出た津波、バリ島で起きた2度目の爆弾テロ、パキスタンで起きた大地震―と周辺国で惨事が相次ぐ。シンガポールでもテロ対策は徹底しているが、実際にどこまで防げるか分からないし、天災も未然に防ぐのは困難である。予測が困難で、またいつ自分に降りかかるかも分からないので時折不安になる。
 アジアの各国で活動してきて、リスクは覚悟の上だ。時には「このことを成し遂げるためには死んでも構わない」と覚悟して行動してきた。これまでは自分の安全を考えるだけでよかった。しかし、結婚し、長男が誕生してから、考え方は変わった。最近の惨事で親を失った子、子を失った親の惨事を知ると涙が出て、いたたまれなくなる。
 自分にも守るべき、失ってはいけない家族ができたのだと自覚する。同時に、自分自身の両親に対しても、自分の安全は自分だけのものではないと感じるようになり、危険を顧みないような行動は自己中心的過ぎたと反省する。
 ただ、事件、テロ、天災はアジアだけの問題ではなく、世界中どこにいても起き得ること。大切なのは、どこにいてもその国や地域の状況を把握し、危険を最小限にする対策を十分にしていくことだと思う。そうしなければ、よりボーダーレスになった世界で夢を持ち、自由に、堂々と活動していくことなどできないのだから。
 (遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)