琉球新報は1893年に創刊し、ことし130年を迎えた。同じ時期に産声を上げ、時を刻んできたさまざまな「130年」の形を歴史とともにたどる。1回目は古い赤瓦屋根の家、ピンプンなどが受け継がれている渡名喜村の伝統的な集落を紹介する。
【渡名喜】1892年に渡名喜村で初めて建てられたと伝わる赤瓦貫木屋(木造家屋)のアガリヌシマムトゥヤーは、築131年を迎える。フクギに囲まれ、赤瓦屋根の家屋が立ち並ぶ同村の集落は、2000年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された。同区保存会の比嘉則雄会長(66)は「渡名喜や沖縄の宝となる原風景を次世代に保存し、継承していきたい」と力を込めた。
1889年、建築材料や家屋の規模などの身分による制限が解除され、渡名喜村では92年にアガリヌシマムトゥヤー、93年にカーヌイリー、カーヌメーなど、財力のある家が続けて屋敷を建てた。明治末期には約半数、大正中期には約90%が赤瓦屋根の木造家屋に移り変わった。
前教育長で保存会の上原雅志副会長(68)は「台風の暴風雨にも倒れない家を造りたいと、赤瓦の家を建てるのがステータスだった」と話す。カツオ漁やイカ漁などで稼ぎ、チャーギ(イヌマキ)やイーク(モッコク)といった高級な木材を1本ずつ買って塩水につけて保存し、数年から10年ほど準備して家を建てた人もいたという。
比嘉会長は「景観保全のため、2年前からボランティアでフクギの剪定(せんてい)などに取り組み始めた。村民全員で町並みを保存していく」と意気込んだ。
(上江洲仁美)