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石垣・川平のホテル計画、高さ制限緩和に慎重姿勢 市、水資源確保を優先


社会
石垣・川平のホテル計画、高さ制限緩和に慎重姿勢 市、水資源確保を優先 リゾートホテル建設計画が再浮上している地域=14日、石垣市川平
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【石垣】石垣市川平にリゾートホテル建設計画が再浮上し、市が川平景観地区の一部で建物の高さ制限緩和に前向きな姿勢を示していた件で、市は13日、一転して緩和に慎重な姿勢を示した。この日の市議会一般質問で、砥板芳行氏の質問に市建設部の運道徹部長は川平の高さ制限に関して「緩和については決定していない」と答えた。市内でリゾートホテル建設計画が二十数件あり「水資源の確保が行政課題だ」と説明し、市としてさらなる開発ではなく、水資源確保に優先して取り組む考えを示した。

 川平へのホテル建設計画が明らかになったのは2016年。米ホテル大手マリオット・インターナショナルが運営するとして注目を集めた。だが、市は乱開発を防ぐため景観法に基づき川平区を景観地区に指定しており、建物の高さを7メートル以下(一部10メートル以下)に制限している。そのため7メートルの高さ制限を満たす2階建てで計画が進んだ。

 だが、市は17年1月に防災や観光面など社会情勢の変化を理由として、建物の高さ制限をしている景観地区の見直しに関する検討会議を設置し、第1回会合を開いた。

 これを受け、地元の川平地域では規制緩和への警戒感が広がった。一方、市は事業者から高さ制限見直しの要請は受けていないとして、検討会議発足との関連を否定した。

 ■住民説明会で紛糾

 18年、市は高さ制限緩和の方針などを盛り込んだ、景観地区の見直し案をまとめ、3月末から川平地区など市内4カ所で住民説明会を開いた。川平の住民からは「景観が壊される」など反発の声が上がり説明会は紛糾した。

 一方、同時期に事業者は報道陣に対して、制限が緩和された場合、ホテルの建設計画を7~8階建て(高さ約27~30メートル)に見直す方針を明らかにし、制限緩和に期待感を示した。

 18年5月、市は市都市計画審議会に建造物の高さ制限緩和を盛り込んだ景観地区変更案を諮問した。だが同案は否決され、中山義隆市長も後日、高さ制限を緩和しない考えを表明した。

 川平住民の一貫した反対の声もあり、その後、マリオットは撤退し、ホテル建設は頓挫した。だが、21年から別のホテル建設計画が再浮上し始める。関係者によると、開発事業者と市は水面下で協議を進めていたという。

 ■議論先送りへ

 今年2月、川平公民館は高さ制限を堅持するよう、中山義隆市長に要請した。だが、その後の3月定例会で野党市議の質問に対し、市は高さ制限緩和を検討していると明らかにした。中山市長と当時の建設部長は「事業者から高さ制限7メートルでは地域に貢献できる高付加価値のホテル建設は難しいため、緩和の打診を受けている」などと述べ、事業者の意向に応じる方針を示した。

 半年経過した9月定例会。13日の一般質問で運道部長は「緩和については決定していない」と述べ慎重姿勢を見せた。運道部長は本紙の取材に対し「まずは立ち止まって、水資源の確保という行政課題を整理する。オーバーツーリズムの懸念もある」と述べ、川平の高さ制限緩和の議論は先送りする見解を示した。

 川平公民館長の高嶺英康さん(63)は「当然だ。地域は緩和に反対している」として、市の見解を評価した。
 (照屋大哲)