「お客さんに感謝」 36年愛された「奴寿司」が閉店 澤岻さん夫婦、二人三脚で営む 沖縄・名護


「お客さんに感謝」 36年愛された「奴寿司」が閉店 澤岻さん夫婦、二人三脚で営む 沖縄・名護 惜しまれながらも閉店した奴寿司の大将澤岻安英さん(左)と妻の京子さん(右)=9月29日、名護市大中
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 【名護】名護市大中で、地域住民に愛された寿司屋「奴寿司(やっこすし)」が9月30日、閉店した。大将の澤岻安英(やすひで)さん(65)が30歳の時の1987年に開店し、妻の京子さんと二人三脚で営んできた。安英さんいわく「客のほとんどが常連だ」と言うほどファンが多く、過去には元名護市長の故岸本建男さんなど地元の名士らも集う場所だった。安英さんは「お客さんのおかげでここまでやってこられた。思い出もたくさんある。とても感謝している」と話し、これまで店に通ってくれた客に感謝した。

 安英さんは宜野座高校を卒業後、大阪府に渡り、約3年間、和食や寿司の修行に励んだ。その後、寿司屋の開店を目指して沖縄に戻り、那覇や名護で修行を積み、30歳で念願の店「奴寿司」を開店した。

 ネタの仕込みや魚の目利きには当然こだわったが、客との接し方も大事にした。気さくな性格で客に接し、時には辛口になることもあったというが、そんな性格に引かれ常連も増えた。「客と言うよりは友だちみたいな感覚だった」と笑顔を見せる。常連に店を閉める決意を伝えると「なんで。まだまだ若いでしょ」と惜しまれたという。

 安英さんはこれまでの思い出を「波瀾(はらん)万丈だった。やめたいと思ったことも2~3度ある」と振り返る。「体調を崩して店を休んだとき、客足が減るんじゃないかと心配した。でも、常連さんは変わらず来てくれた」と改めて感謝した。一緒に店を支えた妻の京子さんも「長かったような短かったような。大変だったけど、ここまでやってこられて良かった」と話した。

 閉店前日の29日、奴寿司には多くの客が訪れ、安英さんの寿司を味わった。30年以上、店に通う岸本正博さん(81)は、奴寿司で開かれる最後の模合に参加した。岸本さんは「さみしくなる。これからどこで模合を開けばいいんだ」と閉店を惜しむも「大将にはいろんなわがままを聞いてもらった。本当にありがとう」と話した。
  (金城大樹)