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首里くとぅば「手引書」自費出版 83歳、たんめーの思い詰まった1冊「言葉は宝物」金城町の古波蔵さん


首里くとぅば「手引書」自費出版 83歳、たんめーの思い詰まった1冊「言葉は宝物」金城町の古波蔵さん 「首里くとぅば手引書」を自費出版した古波蔵保隆さん(前列中央)と家族=9月、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 座波 幸代

 那覇市首里金城町の古波蔵保隆さん(83)は、うちなーぐち継承の一助になればと、生まれ育った首里の言葉をまとめた「首里くとぅば 手引書」を自費出版した。「琉球王国時代の伝統文化は首里の言葉を基本としている。子や孫の世代につなげていかないと、言葉も文化も失ってしまう」と切実な思いを胸に、10年以上かけて忍耐強くまとめた。「私は学者や専門家ではないが、金城(かなぐしく)のたんめー(おじいさん)の思いが詰まった手引書を通して、言葉は『宝物』だという認識を若い世代に持ってもらいたい」と話す。

 手引書は全382ページ。「あなたと一緒に学ぶ」とサブタイトルをつけ、若い世代にも分かりやすい表記や興味関心を高めるよう工夫した。

 五十音順にさまざまな単語をひらがなと漢字表記で記載。読み方と意味を紹介し、言葉の用法やちょっとしたエピソードも盛り込んだ。沖縄のゆしぐとぅ(寄せ言、金言)も集め、「慶良間(きらま)や見ゆしが 睫毛(まちぃぎ)や見いらん(灯台もと暗し)」といった、ことわざとの対比も紹介している。

 家族・親族の呼び方や体の各部の名称など、役立つ日常語をまとめたほか、首里城や琉球の文化の説明、首里の町名とその由来なども掲載している。

 小学校教員だった古波蔵さん。定年退職後、69歳から琉球新報の「声」欄へ投稿を始めた。掲載の際にもらえる図書券を使って沖縄の事典や古文書を買い、学びを深めた。心臓の手術後、手の震えが起きるようになり、パソコンのキーボードを打ち間違えることも多くなったが、あきらめることなく忍耐で手引書を仕上げた。

 「復帰50年、教育も普段の会話も大和口で統一され、本土化が浸透した。若い世代のうちなーぐちへの興味関心が薄れている」と危機感を持ち、「感性豊かな義務教育の時期に、うちなーぐちを学ぶ機会をカリキュラムにすることが望まれる」と話す古波蔵さん。手引書は那覇市内の小中高校や研究所などに寄贈したいと考えている。

(座波幸代)