始まりは南風原町の喜屋武集落だ。開始時間と書いてあった午後8時の少し前に到着すると、倉庫から大綱が出されたところだった。それから綱の点検と補修が行われたようだ。10時過ぎにようやく対の大綱が向き合った。すると東西の男衆が体をぶつけ合う。けんかそのものだ。離れては、またけんかを繰り返し、ようやく綱引きが始まったのは11時半ごろ。勝負は数分ほどでついた。くたくたのふらふらになった。
その後、沖縄三大綱引きの一つ与那原大綱曳を初めて見た。大綱に乗った支度(したく)は神々しい。なのにカナチ棒が入ると、大綱は支度ごと一気に地面に下ろされて、数千人による引き合いが怒濤(どとう)のごとく始まる。そのギャップに驚いた。
南城市大里字大城の大綱引きは異国にいるような錯覚を覚えた。高台にある公民館が広場を見下ろす。公民館に続く階段は観客席のようだ。色も形も豊かな旗頭と、朱色に縁取られた旗は、那覇で見慣れたものと全く違う。実行委員の黄色い法被が映えていた。
それから、古式エイサー、豊年祭や十五夜行事もいくつかの地域で見た。沖縄に来て20年余がたち、だいたいのことを知っているつもりでいたが、間違いだった。特色ある地域行事を通して、南部地域の豊かさを実感している。
秋は芸能公演が続く。十年ぶり、数十年ぶり披露という公演もある。全てを見たいが、体力が続かない。2、3年かけてじっくり楽しもう。