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「きゆな牧場」キャンプ場にマッサージ…生き残りに新事業 東京から帰郷の娘一家が支える 沖縄・大宜味


「きゆな牧場」キャンプ場にマッサージ…生き残りに新事業 東京から帰郷の娘一家が支える 沖縄・大宜味 今年1月に大宜味村へ帰郷した渡久山さん一家=11月11日、大宜味村津波のきゆな牧場
この記事を書いた人 Avatar photo 武井 悠

 【大宜味】飼料価格の高騰による生産コストの上昇で酪農家の経営が厳しくなる中、大宜味村のきゆな牧場(喜友名慶子代表)は酪農に加え、さまざまな新事業の展開で牧場の生き残りを目指している。活動の中心は喜友名代表の四女で今年1月に大宜味村へ帰郷した渡久山愛美さん(38)と、夫で今帰仁村出身の敬士さん(37)だ。同牧場が手がけてきた6次産業をさらに広げる形で、動物や自然を感じながらキャンプやマッサージなどができる場所を目指した取り組みが始まっている。

 きゆな牧場は酪農や民宿のほか、新型コロナの影響で中断していた学校や団体向けの教育ファームも再開した。一方で経営者の世代交代が近年の課題となっており、元気な間に引き継ぎたいという両親の思いを受け、愛美さんが東京から村へ戻る決断をした。芸人だった敬士さんは妻の決断に1年悩んだが、周囲の前向きな言葉に後押しされ、家族での帰郷を決めた。

 東京でマッサージの仕事をしていた愛美さんは帰郷後も自然とコラボした場所で同じ仕事を続けたいと考え、今年2月に「KIYUNA鍼灸(しんきゅう)マッサージROOM」を開業した。牧場に隣接した施設からはやんばるの自然や牛が眺められるといい、愛美さんは「自然を眺めてすがすがしい気持ちになれば、癒やし効果は倍になる」と笑う。

 渡久山さん夫妻はマッサージ施設に続き、12月の供用開始を目指してキャンプ場の整備を放牧地脇で進めている。夜間放牧されている牛が早朝に牛舎へ戻る様子の見学や牛を眺めながらのアフタヌーンティーなど、牧場ならではの非日常的な体験を子どもも大人も楽しめる形で提供することが目標だ。

 新事業の展開には施設の老朽化や資金面の課題もある。今年6月にはボランティアスタッフが宿泊する環境を改善するため、初のクラウドファンディングを実施し、76万円が集まった。今後も返礼品などの準備を進め、継続してクラウドファンディングに取り組む。愛美さんは「地域の人やお世話になった人が私のできることで幸せになってくれればうれしい。みんなが喜んでもらえる場所にしたい」と意気込んだ。敬士さんは「日本一の牧場芸人として東京でも仕事をもらい、牧場をPRしたい」と笑った。

 (武井悠)