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各地で卒業式 希望の門出 白煙たき惜別の歌 名護・屋部中 PTA、3年生110人に歴史再現


各地で卒業式 希望の門出 白煙たき惜別の歌 名護・屋部中 PTA、3年生110人に歴史再現 惜別の白煙(中央奥)が昇る「嘉例吉の渡波屋」を背に卒業式会場を後にする卒業生ら=9日、名護市立屋部中学校
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【名護】松の葉をたいて白煙を上げ、子や移民が乗る名護湾の船に向かって惜別の情を示したという高台「渡波屋(とわや)」に隣接する名護市立屋部中学校(仲田欣五校長)で、9日の卒業式に合わせ、その歴史を再現する試みが同校PTAによって実施された。地域の人々が歌三線とともに頂上でリュウキュウマツの葉をいぶし、卒業生の門出を祝った。
 屋部の人々を描いた上野英信「眉屋私記(まゆやしき)」の序章「嘉例吉の渡波屋」に「渡波屋の頂は、船送りの庭である」とあり、特に20世紀初頭に出稼ぎが増えるとともに煙の回数も増え、親たちが「くまー、うやどぅ(ここだぞ、親は)」と涙したという記述が残る。
 卒業式を終えた3年生110人は会場を出て、西屋部川の対岸から聞こえる歌「だんじゅかりゆし」と昇る白煙に見送られ、保護者がつくる花道を通った。立津政音(せいん)さん(15)はそれを眺め、母親に「支えてくれてありがとう」と声をかけた。
 企画した伊差川江里香PTA会長は「長年の地域の人たちの願いが重なって、実現することができた」と感謝した。
 卒業式では、眉屋私記について学習してきた伊差川実怜さん(3年)が「地域に誇りを持ち、夢に向かって頑張ります」と答辞を述べた。 (増田健太)