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壮絶 ロタ島の戦争 紙芝居に 97歳仲井間さん 山内中で講話 級友の叫び、今も


壮絶 ロタ島の戦争 紙芝居に 97歳仲井間さん 山内中で講話 級友の叫び、今も 南洋諸島の手作り地図で太平洋戦争の壮絶な体験の紙芝居で戦争の愚かさと、平和の尊さを訴える仲井間小夜子さん =8日、沖縄市立山内中学校
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【沖縄】「戦争は絶対だめ」―。太平洋戦争中、南洋諸島のロタ島で壮絶な体験をした、沖縄市に住む仲井間小夜子さん(97)の紙芝居と講話が8日、市立山内中学校のクラブハウスであり、校区内の住民ら約30人が訪れた。同校ボランティアの「読み聞かせももの会」(内田美佳代表)の主催で、慰霊の日を前に「戦争と平和」を考えるのが目的。
 仲井間さんは恩納村出身。1938年、10歳の時に南洋諸島に出稼ぎに行った父に呼び寄せられサイパン島へ渡った。1943年、近くのロタ島に移住した。44年6月、米軍による南洋諸島への激しい空襲、艦砲射撃が始まった。戦況は悪化し仲井間さん一家も命からがら逃げ回る毎日が続いた。自身も意識を失うほどの大けがを負ったという。
 終戦後の46年に沖縄に引き揚げ、その後、養護学校の教諭となった。60歳の退職直前に取り組んだのが戦争体験の紙芝居だ。語り部に一抹の不安があったというが、周囲に背中を押され、紙芝居と講話に取り組んできた。大型画用紙の紙芝居は40年近く使い続け、現在も月3、4回の講話依頼を受ける。
 この日の講話では、ロタ島での砲撃で多くの同級生らが海浜に追い詰められて命を絶った状況を回想。「助けて」「死にたくない」との阿鼻叫喚(あびきょうかん)の絶叫が今なお頭から離れないと語った。
 一命を取り留めた壮絶な体験から「愚かな戦争をしてはならない」と口元を引き締める。「戦争準備の基地は造るべきではない」と強調し、紙芝居は「平和」の言葉で結ぶ。近年の自衛隊や米軍の機能強化の動きを危惧し、辺野古新基地建設の反対行動にも参加していることを明かした。
 定年退職後は、20代で取得した看護師資格を生かして働き、現在は同校で読み聞かせ活動にも参加する。「まだまだ頑張る」と決意を披露した。講話後はサプライズでカジマヤーの小宴も開かれ、花束やプレゼントを受けた仲井間さんは、たくさんの笑顔に包まれた。
 小学生の2人の子どもと講話を聴いた新川絹子さん(41)は「子どもたちのために平和な環境をつくっていく努力の大切さを学んだ」と話した。
 (岸本健通信員)