創意工夫で復活した門付け芸
チョンダラーとは、かつて琉球王国内を行脚し、門付け芸(家々を回り芸を披露すること)をした一団だ。カラフルな衣装、目を楽しませる動きや小道具、キャッチーな歌は見る人を笑顔にし、3年間の厄をはらうという。元来のチョンダラーたちは廃藩置県に伴い、衰退していったとされるが、読谷村の伊良皆芸能保存会がこれを再現する取り組みを続けている。練習の場に足を運び、古くて新しい芸能と、踊り手たちの姿を記録した。
私達「京太郎」や世願しる歩っちゃびーる
訳:私たちチョンダラーは世の中の繁栄と平安を祈願して村々を行脚しております
チョンダラーの演舞の冒頭、リーダーである「やんざい頭」はそんな一節を述べる。その後、扇子舞、人形劇、鳥刺し舞、升斗舞、馬舞、獅子舞が順番に披露される。いずれの演目もウチナーグチが使われるが、県外の芸能との共通点も多い。15世紀後半に本土から琉球へ渡ったという、チョンダラーのルーツにも想像が広がっていく。
研究重ねかたちに
伊良皆芸能保存会で、演舞を指導するのは上地正勝さん。20代でチョンダラーに興味を持ち、文献や古典芸能の歌詞などに残っていた断片的な記録を収集。その姿を少しずつ明らかにしていった。チョンダラーは本島各地を行脚できたことから、首里王府の後ろ盾を得た身分だったと上地さんは確信している。
研究成果を本格的に曲と踊りにしたのは約18年前。演者たちも巻き込んで、資料との整合性をとりながら作業した。「夢に出るほど考えたよ」と上地さんは笑う。演者は18年の間に世代交代し、現在のメンバーは5代目だ。
自然体の踊り手たち
芸能保存会の練習は、毎週金曜日に行われる。5代目たちはそれぞれ学業やアルバイトを終えてから集まる。 このメンバー、もともとは先代の練習をのぞき見していた子どもたちだったそうだ。「やってみるか?」。上地さんが声をかけたことがきっかけで、チョンダラー芸能を担うまでに成長した。
馬に蹴られて「アガー!」となる演技の練習。ウチナーグチを使ったユニークな芸能が日常の中にある(記者撮影)
練習を見学すると、芸能が彼女・彼らの生活の一部であることがすぐにわかる。スマホをいじったり、お菓子を囲んで談笑していたメンバーが、カジュアルに演舞を始めるのだ。舞踊「高平万歳」を見よう見まねで楽しそうに踊っていたこともあった。遊んでいると思いきや、いつの間にか真剣になっていることもある。
のびのびとした演者たちに合わせ、各演目も柔軟に変化できる余地が持たせてある。人形劇のセットは、現代の舞台のサイズに合わせて大きくした。獅子舞の動きは組踊の所作を参考にして、よりダイナミックになったそうだ。
「伝統に基づきながらも、自分たちの創意工夫がある。そこに価値があると思います」
これまでの活動を総括した上地さん。21日には伊良皆区で「十五夜踊り」が開催される。チョンダラーたちも出演予定。珍しい門付け芸が見れる機会に、足を運んでほしい。
(津波 典泰)
伊良皆区十五夜踊り
日時:21日(土)18時~
会場:伊良皆公民館
〈取材協力〉
沖縄県立芸術大学
呉屋淳子、向井大策(共に音楽文化専攻教員
(2024年9月12日付 週刊レキオ掲載)