少年男子カナディアンペア500メートル決勝。平良一喜(いちき)(宮古総実高3年)、山城瑞希(沖縄水産高3年)がスパートをかけたのは最後の200メートル付近から。平良は「徐々にスピードを上げて、最後は気合と気力だけだった」とアドレナリン全開だった。残り100メートルでスパートをかけようとする他のチームよりパドルの回転数が明らかに速く、最後までピッチを維持できるかが勝負の分かれ目だった。
前の平良がペースメーカー、後ろの山城が艇を真っすぐ安定させる役を担った。山城は「2位だった予選はスタートで遅れ、中間もタイムを落とした。最後の10メートルで抜け出せた」とうなずいた。ほぼ同時のゴールとなった愛知、鹿児島との三つどもえの激戦を制しての栄冠だった。
一喜の父・祐喜監督は「九州ブロックの時に全国も狙えると確信した。パドルの回し方はきれいに合ってなかったが、フォームを固めるよりも、暴れるようなこの勢いを生かした方がいいと思った」と全国一に向けて動き出した。
最後まで持続したスタミナは、朝6時から夕方6時までみっちりこなした確かな練習量に裏打ちされていた。
一喜は2年生の頃、一時期カヌーから離れた時期があった。「父親が監督、部員は一人、きつい練習」に嫌気がさし、他の友達のように遊びに夢中になった。沖縄水産のカヌー仲間が頑張る姿や「辞めるなよ」との励ましの声を受けて、寄り道から舞い戻り、再びきつい練習に耐えてきた。「やっと親孝行ができた」。ライバルで仲間の山城と歩んだ努力が報われた喜びも体に染みていた。
(大城三太)