宮古島出身初のJリーガーで、2022シーズンを最後にFC琉球を引退した上里一将さん(37)がサッカースクールを開設し、新たなステージでサッカーと向き合っている。Jリーグからは10月、元日本代表の中村俊輔らが名を連ねる功労賞の発表があり、12人の一人に選ばれた。プロの最前線でしのぎを削ってきた上里さんが自らの経験や技術を伝え、将来を担う若い世代に思いを託す。
上里さんは、Jリーグ500試合以上の出場や代表経験者であることなどが条件とされるJリーグ功労賞に選ばれた。「目指していた賞ではあるが、実際に選ばれてびっくりした」と素直に喜んだ。
プロを退いた今も生活リズムは変わらない。午前中をランニングに費やし、体調管理に励む。指導者として歩み出した一方で現在、アマチュア選手として社会人クラブのFCセリオーレでプレーし、九州リーグ入りを目指している。「アマでプレーするにしても、教える側になった場合も万全の体調でいたい」というのが信条だ。
■垣根なく
10月下旬、金武町で小中学生たちにボールの蹴り方や技術を指導し、ミニゲームで楽しみながらサッカーボールを追う上里さんの姿があった。
9月から金武町でスタートさせた「Veinte(ヴェインテ)フットボールスクール」で小学校低学年、高学年、中学生を時間別に分けて毎週火曜日に指導を行っている。他のサッカークラブにも通いながら上達を目指す子どもたちが多く、「いろんな指導を受けた方がいい。みんな驚くほど吸収が早い」と手応えを感じている様子だ。
指導の際、細かい声掛けをしながら、お手本となる蹴り方を見せて伝える。重視しているのは、足元の技術、周りを見る技術だ。「ドリブル技術も大事だが、足元に視線がいきがちになる。頭を上げて広く周りを見渡す技術も大切」と視野の広さを身に付けさせたい考えだ。FC琉球でアカデミーを指導するロールモデルコーチの肩書もあるが、垣根なく指導したいとの思いでスクール開設に至った。「金武町でのスタートだが、沖縄全域、離島の子も教えていきたい」と目標を掲げる。
セリオーレ沖縄スポーツクラブ代表の友利貴一さん(32)がサポート役として子どもたちと戯れ、上里さんを支える。「プロとして19年の経験があり、彼にしか伝えられない細かい技術がある」と同じ方向を向く。
■現役時代
FC琉球での4年間、守備と前線のつなぎ役となる中盤のボランチを任され、チームを支えた。当時の樋口靖洋監督から全幅の信頼を得て、2019シーズンから4年間在籍し、20年から3年間主将を務めた。同時に重くのしかかる責任とも戦いながら、プロとしての姿勢を示し続けてきた。
22年、チームとの契約更新はならず、19年間のプロ生活に終止符を打った。「背番号20、チームも創設20周年、プロ生活も20年目に入るタイミングで今年まで選手としてピッチに立ちたいという思いはあった」と本音を吐露する。
手術をする3度の大けがを経験。「一年一年必死に過ごしてきた」という現役時代はピッチ上で笑顔も少なかったが、引退会見で見せたサッカー少年のようなはつらつとした笑みが指導の現場でもはじけた。「子どもたちにJ1の舞台を見せられなかったことに1番悔いが残る」。その言葉を胸に将来のJリーガーを育てていく決意だ。
スクールの公式ラインQRコードはhttps://lin.ee/UBEocII
(大城三太)