スポーツ選手をスポーツ科学の視点から支援する施設「スポーツサイエンス&ウェルネスセンター(SSWC)」が、12月までに糸満市に誕生する予定だ。モデルとなる国立スポーツ科学センター(JISS)=東京都=で研究員をし、五輪日本代表のスタッフだった大城英稔さんと黄忠さんが運営する。スポーツ科学を沖縄に根付かせ、トップアスリートの育成や県民の健康増進につなげるつもりだ。一般社団法人スポーツおきなわ代表理事の大城さんは「地域版のJISSのようにし、幅広い年代の方がスポーツ科学のサポートが受けられるようにし、心と体が豊かになるような施設にしたい」と意気込んでいる。
JISSは日本の国際競技力向上を目指し、スポーツ医科学などの分野から支援を行う拠点として2001年にオープンした。五輪出場選手などトップアスリートの運動能力や体格などのデータを収集し、医学・科学的な観点から調査・研究を行い、競技者や指導者などの支援を行う。
![](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/04/5-38.jpg)
大城さんはプロバスケットボールチーム琉球ゴールデンキングスでストレングス&コンディショニングコーチをし、その後JISSで研究員を務めた。黄さんもJISSで研究員をしており、16年のリオ五輪に向けたサポートチームで大城さんと出会った。
2人はジュニア期から科学的に選手をサポートすることで、競技力向上だけでなく選手寿命が延びるとして、スポーツおきなわを設立してSSWCの構想を練り上げた。SSWCは9226平方メートルの広さで、測定・ケアエリアのほか、バスケやテニス、フットサルのコートを整備する予定だ。
施設ではスポーツサイエンスとウェルネスの部門で選手や地域住民をサポートする。スポーツサイエンス部門では、県内の競技団体に所属する選手の身長や体重、瞬発力や持久力など運動データを計測し、分析する。各選手の強みや弱みを数値化し、必要なトレーニングなどを指導する。ウェルネス部門では、一般住民の健康増進のために身体データを集めて、減量や筋肉増強につなげるようにする。
データを集めてビッグデータ化し、県内のトップ選手の育成や県民の健康増進に活用する。現在は県内ジュニア選手の測定や評価を進め、スポーツ科学のモデル拠点を浦添市に設置してフィットネス事業を展開する。黄さんは「スポーツ科学の視点でアドバイスすることで、運動の継続率も上がってきている」と手応えを感じている。
SSWCはウェルネス部門は有料となるが、スポーツサイエンス部門は各競技団体の推薦する子どもたちへの計測などは無料にする予定だ。スポンサーを集めるなどし、建設費や器材費を抑えることで継続的に選手や地域の人をサポートする方針だ。
施設完成後は子どもたちが学校の後にスポーツに親しめる居場所にし、休日にスポーツイベントを開催して地域の交流の場にするという。本島の中北部にも拠点を増やし、県外や国外から沖縄にトレーニングに来る選手の体力測定もできるようにし、スポーツ観光に寄与したいと考えている。大城さんは「スポーツ科学を県民に広げ、スポーツを楽しみ、健康になっていくためのツール、施設にして、沖縄の健康や観光にも役立てる場所にしたい」と語った。
(屋嘉部長将)