呉 寄南氏 (上海市日本学会名誉会長) 中国の追求は平和的統一


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 台湾問題は日中関係にとって越えてはならない一線だ。アヘン戦争以降、列強勢力の侵略により、マカオ、香港、台湾は相次いで中国の領土から分離された。台湾は唯一の「流浪者」となった。中国のいかなる指導者であっても、14億人民の感情を無視し、両岸統一の旗を放棄することは不可能だ。
 「台湾有事」説は悪意のある戦略的なわなだ。2021年に安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事であり、日米安保有事である」というレトリックを唱えた。この発言は中日関係の政治的基盤を震撼(しんかん)させ、ひいては破壊する起爆剤になった。
 中国が追求しているのは、両岸の平和的統一の達成だ。武力行使の約束を放棄しないのは、少数の台湾独立勢力が正気を失い、外部の力で分離独立を図っているためだ。
 中国は今まで一度も、武力統一を唯一の選択、そして最終的目標と据えたことはない。発生確率が非常に低いこのシナリオを、すぐにでも起こりうる現実として大げさに誇張することは、中国大陸の対台湾政策に対する歪曲(わいきょく)だ。
「中日両国はアジアの平和に共同で貢献すべきだ」と主張する上海市日本学会名誉会長の呉寄南氏