米軍訓練に自治体困惑 説明少なく、さらに拡大も


米軍訓練に自治体困惑 説明少なく、さらに拡大も 2022年に米軍使用が合意された主な自衛隊施設
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陸上自衛隊与那国駐屯地=2022年11月、与那国町与那国
 「米軍から宿泊予約の問い合わせがあった。どう対応すればいいのか」。2020年9月、宮崎市内のホテルから宮崎県に連絡が入った。「寝耳に水だった」(県関係者)ため、防衛省九州防衛局に確認。翌10月から同県新富町の航空自衛隊新田原基地で行われる日米共同訓練に合わせ、米軍が宿泊先を探していたことが判明した。県は訓練自体、知らされていなかった。
 当時は新型コロナウイルス禍の影響で、米兵が街に繰り出すことを不安視する住民が多く、県に問い合わせが相次いだ。
 だが県には米軍と直接交渉できる窓口はない。防衛省を通じて基地内に泊まるよう再三求めたが実現しなかった。22年の訓練でも一部の米兵が基地外に宿泊した。
 混乱は各地でも表面化している。大分県の陸自日出生台や宮城県の陸自王城寺原両演習場などでは、地元の意向に反した夜間砲撃や訓練日数超過などがあった。
 新田原と福岡県の空自築城基地では、米軍が緊急時に使用できるよう弾薬庫や駐機場などを整備。築城では滑走路も延長する。だがどのような状況が「緊急時」に該当するのかなど、地元への明確な説明はないままだ。
 政府関係者は日米合同委員会や事前交渉では「米側からかなりむちゃな要求をされることもある」と打ち明ける。共同訓練に際し、住民説明会の開催義務はなく、地元の同意を得るかどうかは「ケース・バイ・ケース」(防衛省)という。
 政府は中国を念頭に置いた南西地域の防衛力強化のため米軍との関係をより深めている。防衛省幹部は「今後も共同訓練は増える」と言い切る。
 ある自治体の関係者は「不安に感じる住民は少なくない。早期の情報提供や安全対策など地元の要望が反映されるよう、国は米側に訴え続けてほしい」と話している。