安倍氏国葬、検証含まず 政府 記録集の全容判明


安倍氏国葬、検証含まず 政府 記録集の全容判明 安倍元首相国葬記録集
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は、昨年9月に執り行った安倍晋三元首相の国葬の記録集を作成した。事務資料を整理した一方で、実施基準や経費の妥当性など課題を検証した有識者ヒアリングの内容は含まれなかった。巻頭に写真41ページ、本編は151ページあり、合計はほぼ200ページに及ぶ。本編に松野博一官房長官が「準備から執行、事後処理に至る概略を取りまとめた」と序文を寄せた。
 共同通信が9日までに記録集の写しを入手し、全容が判明した。
 完成した記録集は内閣府の事務局が編集作業を進めた。
 内容は(1)国葬実施や予備費使用の閣議決定文書(2)実行幹事会の概要(3)当日の司会進行表(4)案内状と区分別の発送数(5)会場設営手順や参列者の送迎計画―といった事務資料が並ぶ。
 岸田文雄首相や、友人代表の菅義偉前首相らの追悼の辞も収めた。参列者に当日配布したしおりには式次第とともに、安倍氏の写真、「夢」の揮毫(きごう)、略歴が記載されていた。記録集は近く国会図書館で閲覧可能になる。
 松野氏の序文は「憲政史上最長の8年8カ月にわたり首相の重責を担った」など国葬を決めた理由について従来の政府見解を示し、「故人の人柄と事跡をしのばせるにふさわしい盛儀だった」と総括。記録集が「理解の一助となれば幸いです」と締めくくった。
 ただ政府が昨年12月公表した有識者ヒアリングの論点整理には、実施に当たり政府や国会の事前調整が必要だったとの指摘が盛り込まれたのに対し、記録集では触れていない。
 政府は過去にも、公費支出した首相経験者の葬儀記録集を作成している。関係者は今回も前例に倣った構成だとして、検証や批判に触れなかったのは「有識者ヒアリングの論点整理を既に公表したため」と説明した。