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中国、越境「法執行」か 海外反体制派に圧力 「東京で暴行」証言も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京都内で中国語を話す人物に突然ポリ袋のようなものをかぶせられた―。日本を含む海外に滞在する中国の民主活動家や反体制派とされた人たちが何者かに拘束されたり、暴行を受けたりするケースが相次いでいる。中国当局が暗躍している可能性もあり、主権の及ばない海外で“法執行”をするかのような動きに懸念が強まる。
 「なぜメディアに話したのか」。2月、中国で民主化や憲政の実現を掲げる政治団体に所属していた日本在住の男性(37)は東京都江戸川区で、中国語を話す人物から暴行を受け、顔や胸に擦り傷を負った。
 男性は1月に3人組の男から「情報収集の仕事」を持ちかけられた。在日の民主活動家に対するスパイ活動の勧誘と受け止め、そのことを中国語メディアに暴露していた。暴力を振るう不審者は「(日本の)警察に話せばただでは済まない」と脅したという。
 近年、この男性以外にも同様の被害が表面化。米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によると、中国のインターネット統制への抵抗を呼びかけた男性は5月、滞在先のラオスで中国公安の関係者とみられる人物に拘束され、その後中国本土の地元へ移送された。
 在米の人権団体、南モンゴル人権情報センターによると、モンゴルでは5月、中国のモンゴル族作家ラムジャブ・ボルジギン氏が拘束され、中国に連行された。
 習近平指導部は、民主主義など海外の価値観が国内に浸透すれば独裁体制を揺るがしかねないとの危機感を深め、国家安全法や反スパイ法を制定し統治に不利益な情報や言動の封じ込めに躍起になっている。国力を背景に国外でも中国出身者や華僑への監視に乗り出した可能性がある。
 各国は中国当局の不審な活動を警戒。米司法当局は4月、ニューヨークで拠点運営に関わったなどとして中国系とみられる男2人を逮捕した。ニュージーランド政府は8月、中国の情報機関がニュージーランドの華人社会への介入を強めていると名指しで批判する報告書を公表した。
 中国当局から反体制派と見なされ、カナダで亡命生活を送る肖彦鋭さん(27)は日本留学中の2021年に2人組の男から脅迫を受けたと証言。男は「中国の警察」の関与を示唆したが、日本の警察は真に受けなかったといい「日本で抑圧に遭う人がいれば、解決に動いてほしい」と求めた。 (共同=上松亮介)
東京都内で取材に応じた男性。日本で遭った不可解な出来事に不安を口にした=6月