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子の車内置き去りは「虐待」 パチンコ店、巡回強化 反省ない親、入店禁止も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 車に幼い子どもを残したままパチンコに興じる親が後を絶たない。各地のパチンコ店は、業界団体が作成したマニュアルを基に駐車場の巡回を強化。置き去りを「児童虐待」と位置付け、反省の態度を示さない親を入店禁止にすることもある。酷暑が続く今夏も各地で親の逮捕が相次いだが、従業員の見回りのおかげでいずれのケースでも子どもは無事だった。業界団体の幹部は社会全体で監視すべきだと訴える。
 8月、名古屋市天白区のパチンコ店駐車場で、車への子どもの置き去りを防ぐ見回り訓練が実施された。参加した店員らは懐中電灯を手に車の中を1台1台のぞき込み、途中、後部座席までくまなく確認するよう助言される場面もあった。
 日本遊技関連事業協会(東京)などの業界団体が、巡回の注意点や子どもを発見した際の手順をまとめたマニュアルを作り、訓練に力を入れるのは、置き去りが社会問題化してもなおわが子を車に残してパチンコに夢中になる親がいるからだ。
 全日本遊技事業協同組合連合会(東京)の調査では、2017~22年度に発覚した置き去り事案は計360件に及ぶ。最近は減少傾向にあるものの、依然として高水準で推移している。
 愛知県警は今年6月、生後間もない長女を車に放置したとして、保護責任者遺棄容疑で同県岡崎市の母親(29)を逮捕。約1時間にわたりスロットに興じていた疑いがある。7月には、神戸市垂水区のパチンコ店駐車場に止めた軽乗用車内に男児を残した疑いで、茨城県の20代の母親とその交際相手が逮捕された。いずれの事件も巡回中の従業員が子どもを見つけて発覚した。
 全日遊連によると、逮捕に至らなくても「パチンコ店のトイレを借りただけ」などとうそをついた親は、店が入店禁止にすることもある。中には「車内のエアコンをかけていた」などと主張し、反省の態度を見せない親もいるという。
 ギャンブル依存症に詳しい久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の松崎尊信医師は「ギャンブルは依存症でなくても途中でやめようという動機づけが働きにくい」と解説。決して胸を張れる趣味ではないため、子を家族に預けて遊びに行くのは気が引けるのではないかとも指摘する。
 全日遊連はホームページなどで「車内放置は重大な児童虐待」と繰り返し警告。気温が上がる7~8月を「事故防止特別強化期間」とし、特に巡回を強化するよう店側に求めている。
 名古屋市での訓練を企画した日本遊技関連事業協会中部支部(同市中区)の冨田幸宏事務所長は「店員だけでなく客も周囲の車を気にかけ、社会全体で置き去りを防ぐ環境づくりを進めるべきだ」と呼びかけている。
子どもの車内置き去りを防止する見回り訓練で、懐中電灯で車内を確認する店員ら=8月、名古屋市天白区