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親が精神疾患の子 孤立させず、困難知って 当事者の大学生ら 支援団体立ち上げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 精神疾患の親を持つ子どもはSOSを発信するのが難しく孤立しがちだとして、当事者の大学生らが支援団体のNPO法人「CoCoTELI(ココテリ)」を立ち上げた。同じ境遇の仲間がオンラインで集える居場所づくりが活動の中心だ。抱えている困難に「社会が気付いて声を聞き、サポートする仕組みが必要だ」と訴える。
 浜松市に住む大学4年の平井登威さん(22)は幼い頃、気分の変調が激しい父に恐怖を感じ、祖父母の部屋に逃げることもあった。母から父の悪口を聞かされ続け、祖母には「我慢してね」と諭された。消えてしまいたいと感じた時は、好きなサッカーに打ち込んで平静を保った。
 父がうつ病と知ったのは小学校高学年の頃。それまで当たり前だと思っていた家庭環境に違和感をもった後も「周囲に助けてと言う発想はなかった」と振り返る。
 大学進学後、似た境遇の友人と出会い、経験を共有することで救われた。ともにオンラインで悩みを聞く居場所づくりを始め、今年5月に25歳以下の当事者を支援するNPO法人を設立。200人以上と関わり、親だけでなく子も心の不調を抱えていると分かった。
 今後は医療や福祉の専門家に加わってもらい、サポートが必要な当事者とつなげる活動をしたいと考え、クラウドファンディングで資金を集めた。「国にも取り組んでもらえるよう働きかけたい」と意気込む。
 政府は2021~22年、18歳未満で家族を世話する「ヤングケアラー」に関する調査を大学生約1万人に実施。1割ほどが経験者で、母親の介助では精神疾患が理由とのケースが最多、父親の介助でも多くを占めた。経験者の7割が介助している事実や悩みを誰にも相談せず、孤立している実態が浮かんだ。
 仏教大の田野中恭子准教授(公衆衛生看護学)は、親に精神疾患がある場合、サポートがなく十分な養育を受けられなかったり、親の言動に振り回され精神的に不安定となったりして、青年期以降の生きづらさにつながることもあると話す。
 また、精神疾患への社会の理解不足を背景に、当事者や家族が事情をオープンにして周囲に支援を求めるのは難しいと指摘。教育や福祉、医療の現場が連携し「子どもを包括的に支えながら、声なき声に気付くのが大切だ」と強調した。
精神疾患の親を持つ子どもらを支援する平井登威さん=7月、浜松市