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茂木氏封じ 熟考重ね 首相、総裁選再選狙う


茂木氏封じ 熟考重ね 首相、総裁選再選狙う 岸田首相と茂木幹事長の関係(似顔 本間康司)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 13日の内閣改造・自民党役員人事の調整が大詰めを迎えた。岸田文雄首相は「ポスト岸田」候補の一人と目される茂木敏充幹事長について熟考を重ねた末、続投に傾斜。衆院解散のフリーハンドを確保しつつ来年秋の総裁選で再選を確実にするには、政権に取り込むべきか。再任せずに幹事長権限を奪うべきか。ライバル封じ込めの最善策をぎりぎりまで探った。
 11日午後1時ごろ、党本部4階。インド訪問から早朝帰国したばかりの首相は、疲れも見せず総裁室に入った。茂木氏を呼び込んだのは1時間後。首相周辺は「最終面接だ」と解説した。
 幹事長人事を巡るここ数日の動きは「暗闘」(閣僚経験者)の様相を呈していた。
 首相が外国訪問中の7日、茂木氏の続投報道が相次ぎ流れた。首相は周囲に「まだ誰にも言っていないのに、何で報道が先に出るんだ」と怒りをぶちまけた。
 茂木氏には政策面で先走った経緯がある。8月下旬の講演で経済対策に関し、首相が言及していない補正予算の必要性に触れた。
 人事でも自らを差し置き、茂木氏サイドは一気に政局の流れをつくろうとしている―。首相に疑心暗鬼が募ったのは想像に難くない。
 だが茂木氏と事を構えれば、麻生太郎副総裁を含めた3人で形成する「三頭政治」の安定にひびが入りかねない。首相は「茂木氏の腹の内を探る」(側近)道を選ぶ。
 「腹の内」とは何か。関係筋は「二つある。一つは首相の解散戦略に茂木氏が従うかどうかだ」と指摘する。
 首相は夏に地方行脚し、公明党との関係正常化に道筋を付けた。今月10日の記者会見では賃上げと投資拡大に向け「思い切った内容の経済対策を実行したい」と踏み込んだ。公明筋は「いつでも解散できる環境を整備している」と見立てる。
 一方の茂木氏は、低迷する内閣支持率を踏まえ「今選挙をすれば議席を減らす」(周辺)とみて早期解散に慎重だったとされる。解散権は首相の専権事項とはいえ、幹事長が反対なら制約となりかねない。選対筋は「早期解散の選択肢が消え、追い込まれるのを首相は嫌がっている」と語る。
 腹の内のもう一つ。重鎮は「総裁再選の支持確約だ」と話す。
 首相は11日、最大派閥安倍派の萩生田光一政調会長と公邸でひそかに会談した。同派からは、安倍路線を継承する首相に「再選してもらいたいというのが派のコンセンサス」(世耕弘成参院幹事長)との声が出ている。
 幹事長続投と引き換えに提示した条件を茂木氏がのみ、支持確約を得られれば、再選へ道が大きく開くのは間違いない。
 茂木氏をけん制する仕掛けも忘れない。小渕恵三元首相の次女、小渕優子組織運動本部長の選対委員長起用案だ。
 小渕氏は茂木派内で「次世代の首相候補」と期待される。「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄・元党参院議員会長も行く末を気にかけていた。茂木氏と折り合いが悪いとされていた青木氏の遺志に応える形で、圧力をかけるというわけだ。
 首相は人事に口を閉ざす。11日夕、約4時間こもった党本部を離れる際、記者団から「骨格は固まったのですか」と問われたが、無言を貫き車に乗り込んだ。