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白黒を彩色、過去身近に AI活用し、写真加工


白黒を彩色、過去身近に AI活用し、写真加工 関東大震災から復興する東京・浅草の様子。白黒写真(上)をAIで彩色(中央)、さらに当時の資料を参考に色彩を修正した(東大の渡邉英徳教授提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 幕末から昭和初期に撮影された白黒写真を人工知能(AI)などを活用してカラー化し、教科書に載せたり博物館に展示したりする動きが広がっている。この活動に力を入れる東大の渡邉英徳教授は「写真が持つ可能性をテクノロジーで広げ、過去の記録を身近に感じてほしい」と説明。画面に表示した写真の中でアバター(分身)を動かす新たな研究も進める。
 広島の原爆被害の写真や証言を地図上に整理する取り組みをしていた渡邉教授が、白黒だった原爆ドームの写真をAIでカラー化したのは2016年。モノクロで無機質に感じられた被写体が、はっきりと存在感を持ったようだった。がれきが緑色など違和感も残ったが「印象が変わった」。当時の資料や専門家の意見を参考に色を修正し、さまざまな写真を交流サイト(SNS)に投稿すると評判を呼んだ。
 教科書会社の教育出版は、24年春から小学6年が使う社会科教科書に載せる近現代の写真約60点の彩色を依頼した。編集担当者は「白黒ばかりだと暗い印象で、子どもが関心を失いがちだった。色が付けば興味を喚起できる」と説明する。
 今年9月から国立科学博物館(東京)で始まる関東大震災100年の企画展でも、渡邉教授が展示写真の加工を担当した。復興する東京・浅草の様子は、当時の絵はがきなども参考にして大衆の服や傘の色を調査。完全な再現は不可能だが、当時の装束として違和感がないよう数カ月にわたって修正を重ねた。現在は被爆直後の広島市内を撮影した写真を画面に映し、アバターが動き回って奥行きを感じさせるような技術の開発に取り組む。
 渡邉教授は「カラー化は現実世界であることをより強く感じさせ、アバターはそこが空間であること思い起こさせてくれる。写真という記録媒体の可能性を引き出していきたい」と話す。

関東大震災から復興する東京・浅草の様子。白黒写真(上)をAIで彩色(中央)、さらに当時の資料を参考に色彩を修正した(東大の渡邉英徳教授提供)