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デフレ脱却 正念場 岸田再改造内閣発足 賃上げ 価格転嫁が課題 半導体、厳しいかじ取り


デフレ脱却 正念場 岸田再改造内閣発足 賃上げ 価格転嫁が課題 半導体、厳しいかじ取り 第2次岸田再改造内閣 経済施策の課題
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は8月末、最低賃金の全国平均時給を2030年代半ばまでに1500円とする新目標を設定した。企業が原材料費や労務費の上昇分を製品やサービスの価格に適切に転嫁できる方策が求められる。
 戦略物資である半導体で次世代型の量産を目指す「ラピダス」は、国産復活の「ラストチャンス」(経済産業省幹部)とされる。技術革新に遅れないよう巨額投資を続けられるかどうかが焦点となる。
 欧州などに後れを取る脱炭素政策も懸案だ。再生可能エネルギー拡大の「切り札」と位置付けた洋上風力は汚職事件の舞台となり、政策への信頼回復が急がれる。
 通商分野では有志国と組んだ経済安保強化が喫緊の課題に浮上している。米国は覇権主義的な動きを強める中国への包囲網構築をインド太平洋経済枠組み(IPEF)で主導し、日本も同調する。一方、日本は東京電力福島第1原発の処理水放出を巡り、中国が実施する日本産水産物の全面禁輸への対応も欠かせない。宮下一郎農相は「需要拡大などの実効性を上げていくことが責務だ」と話す。
 防衛力強化の財源とする増税の行方も焦点だ。政府や与党は増税時期を年末にかけて検討する方向だ。当初は24年以降としていたが、先送り論が根強い自民党からの提言を受け、25年以降となることが濃厚となった。鈴木俊一財務相は13日、与党内協議の早期開始を要望した。同じ会社に長くいる人ほど優遇される退職金課税の見直しも議論される見通しだ。
 日銀が大規模金融緩和のさらなる修正に踏み切るかどうかも注目される。政府と日銀はデフレ脱却に向け、賃金上昇を伴う形で物価上昇率を2%に安定させる目標を掲げる。日銀の植田和男総裁は「企業の賃金、価格設定行動には変化の兆しが見える」と説明する。
 日銀幹部は「緩和策で当面は経済の下支えを続けるが、金融政策は万能ではない。成長戦略が重要だ」と指摘する。新藤義孝経済再生担当相や西村康稔経済産業相の手腕が問われるとした。
 NTT法の見直し議論は規制緩和により、海外のIT大手と張り合える競争力を付けてもらおうという構想に基づく。一方、同業他社はNTTの肥大化で公正な競争が阻まれると懸念している。自民党には政府保有のNTT株を売却して防衛財源に充てる案があり、11月にも提言をまとめる。