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「沖縄の人々ないがしろ」 2015年の演説 翁長氏、苦難の歴史語る


「沖縄の人々ないがしろ」 2015年の演説 翁長氏、苦難の歴史語る 国連人権理事会で演説し、沖縄の基地問題は人権侵害だと訴える翁長雄志知事2015年9月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2015年9月、日本の都道府県知事として初めて、翁長雄志前知事が国連人権理事会で発言した。翁長氏は、在日米軍専用施設の7割以上が沖縄に集中し、米軍基地から派生する事件・事故や環境問題に県民が苦しんでいる状況を伝え「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えた。
 演説に先立って行われたシンポジウムでは、かつて独立国だった琉球が日本に併合され、戦後の米国による占領を経て1972年に日本に復帰したという歴史を紹介。「私たちは大変過酷な、自らのアイデンティティーを問われる人権問題があった」と話した。「沖縄に基地を置く基地問題の真犯人は一体誰なんだということを、世界中でぜひとも謎解きしてもらいたい」と投げかけた。帰国後には東京の日本外国特派員協会で講演した。
 一連の国連訪問は、全国メディアでも大きく取り上げられるなど反響を呼んだ。一方で、翁長氏が国連演説で用いた「自己決定権(self―determination)」という言葉に対し、自民県議らから「民族の自決権を意味する言葉で、県民が先住民族という前提になっているのではないか」との批判が上がった。翁長氏自身は国連で先住民族という言葉を使っていないが、豊見城市議会などで採択された意見書は「本人の発言内容や意図と関係なく『沖縄県民は先住民である』と誤った認識を世界に発信した」と批判した。
 島ぐるみ会議国連部会長として翁長氏の国連訪問に関わった島袋純琉球大教授は「民族論にすり替えられ、翁長氏が国連で訴えた意義を生かせていない」と指摘する。 

(沖田有吾)

国連人権理事会とは…国連総会の下部機関で本部はスイス・ジュネーブ。47の理事国で構成し、世界の人権保護を目的に国連加盟国の人権状況を監視、改善を促す。専門知識を持った特別報告者や作業部会(5人で構成)のメンバーを任命。特別報告者らはいかなる政府、組織からも独立した立場で国やテーマごとの人権問題を調査、報告する。7月に来日した人権理の作業部会はジャニーズ事務所の性加害問題を巡って、当事者らへのヒアリングを実施し、日本政府に被害者救済の対応を求めた。