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前回出席時に尽力 琉球大学 島袋純教授に聞く 継続的に国連で訴えを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

2015年、翁長前知事が国連人権理事会に出席した際、島ぐるみ会議国連部会長として尽力した島袋純琉球大教授に当時の経緯や玉城知事に求められることを聞いた。
 ―翁長氏出席の経緯は。
 「島ぐるみ会議の運動の柱の一つとして、国連で国際社会に訴えることを目標としていた。翁長氏も『世界中に訴えたい。ぜひ行きたい』と言ってくれた。知事が行くことで、自治体として大きな問題があると世界に訴えることになり、基地問題が人権問題なんだと世界に知らしめることができた」
 ―訴えたことの意義は。
 「サイドイベントで、翁長氏が自身の歴史観を話したことが記憶に残っている。琉球王国が併合されたとはっきり口にした。国連特別報告者のドゥドゥ・ディエン氏はかつて、沖縄について歴史に基づく構造的な差別を指摘したが、翁長氏も歴史が人権侵害の根底にあると訴えた」
 ―翁長氏の帰国後、「先住民族」という言葉を巡って議論となった。
 「翁長氏は演説で先住民族という言葉は一切使っていない。県議会などで、翁長氏が発した自己決定権という言葉を先住民族の権利として捉え、『沖縄の人々は先住民族ではない』という主張が出た。ただ、自己決定権という言葉は、特に道州制の議論の際には保守系の政治家も含めて使用していた。民族論にすり替えられている」
 「自己決定は『人民』の権利であり、2007年の国連総会で具体的な『先住の人民(indigenous people)』の権利宣言が採択された。土地の権利もその一つで、国策でも先住の人民の土地を利用するには自由を保障し事前に十分に情報を伝え同意を得る必要がある。この論理を適用すれば、沖縄の米軍基地は同意を得ないと存続できないことになる。だから、どうしても先住の人民と認めたくないのだろう」
 ―今回、玉城知事は何を訴えるべきか。
 「有機フッ素化合物(PFAS)による水の汚染は、国際的に注目されている。毒性のある物質が垂れ流しで、調査もできないというのはまさに個別具体的な権利の侵害だ。また、県民投票という自由意志に基づく投票で反対を表明された辺野古新基地の建設は、民主主義の大原則に違反しているという主張もしてほしい。定期的に国連の場で訴えていく方法を考えてほしい」 (聞き手・沖田有吾)