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「父のこと」/知念未那子(読谷村・64歳)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 野イチゴを見つけてはしゃぐ私たちに目を配りながら、大粒の汗を流し畑仕事に精を出した父。真っ黒に日焼けした顔、ごつごつとした大きな手、広い背中。貧しい中、懸命に働き私たちを育ててくれた。小さな子ども部屋、勉強机に椅子、何でも手作りしてくれた器用な父。お酒が入ると少しおしゃべりになり変なカチャーシーを踊っては皆を笑顔にしてくれた。 
 新しい物や人の世話が好きで、進んで手伝いを買って出た父。涙もろく、お嫁に行く私より先に泣いていた父。たまに見せるおどけた笑顔は、孫やひ孫たちを温かく包んでくれた。
 高齢になり耳は遠く、痩せて言葉もなくしてしまったけれど、ずっとリハビリも頑張った父。老人ホームの窓から駐車場で手を振る私の姿は見えただろうか。思い出がよみがえってはあなたの笑顔と重なり、あの日お気に入りの帽子をちょこんとかぶり「じゃ行ってくるよ」と言った気がして、雨の朝ひつぎに書いたありがとう、幸せだよと感謝あふれて、合掌。