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反撃能力保有へ増設推進 防衛省弾薬庫整備 住民知らないうちにリスク増も


反撃能力保有へ増設推進 防衛省弾薬庫整備 住民知らないうちにリスク増も 2024年度に弾薬庫整備に着手する陸上自衛隊施設
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 防衛省が2024年度に4道県9カ所で弾薬庫の整備に着手するのは、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)にも使う長射程ミサイルを多数取得する防衛力強化策の一環だ。自衛隊の戦闘継続能力(継戦能力)を向上させるため、大幅に備蓄を増やす弾薬の保管先も必要になる。
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 ただ、保管する弾薬の種類は「防衛能力が明らかになる」(防衛省幹部)として公表されず、周辺住民が知らないうちにリスクが高まるとの懸念もある。
 政府は昨年12月に策定した国家安全保障戦略で反撃能力の保有を決定。地上や戦闘機、護衛艦、潜水艦に長射程ミサイルを配備するため輸入や国産品の開発を進めている。
 26年度には陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾の射程を千キロ程度に延ばす「能力向上型」を地上部隊に配備。海上自衛隊のイージス艦から撃つ米国製巡航ミサイル「トマホーク」も26年度に導入する。トマホークは全長約6メートル、12式の能力向上型は9メートル程度と大型になる見込みで、新たな保管先が必要になる。
 防衛省は23~27年度の5年で約70棟、32年度までにさらに約60棟を整備する方針。23年度は海自大湊地方総監部(青森県むつ市)と陸自大分分屯地(大分市)で計4棟の新設に着手した。26年度ごろには全国で工事が加速する見通しで、防衛省幹部は「まずは反発が少ないところから整備を進める」と明かす。
 弾薬庫の整備が進む一方、長射程ミサイルを何発程度保有するのかや、どの部隊が運用するのかといった計画は明らかにしていない。19年には陸自宮古島駐屯地で、地元への十分な説明なく火力の強い迫撃砲弾などを保管していたことが発覚し、島外に一時撤去した経緯もある。事前に丁寧に説明せずに長射程ミサイルの保管を進めれば、各地で混乱を生じかねない。