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集団移転の要件緩和 大地震に備え「事前防災」


集団移転の要件緩和 大地震に備え「事前防災」 防災集団移転促進事業の要件緩和のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国土交通省は、津波被害が懸念される地域から住民の集団移転を促すため、財政支援の要件を緩和する方針だ。現在は地域の全住民の合意が条件だが、2024年度から、隣接、近接する5戸以上の意向が移転でまとまれば、その世帯だけでも防災集団移転促進事業の対象とする方向で調整している。南海トラフ巨大地震などに備えた「事前防災」を進める狙いだ。
 同事業では、自治体が高台などに住宅団地を造成し、道路や公園なども整備。元の宅地を買い取り、引っ越し費用も支援する。新たな家を建てた場合は、住宅ローンの利子相当額を補助する。
 ただ、災害前に移転する場合、移転元のインフラ整備は最低限とし、防潮堤などは整備しないことが条件。住み続けることを希望し、防災インフラの強化を求める住民もいるため、合意形成が難しかった。
 要件緩和により、希望する世帯の早期移転が可能となる。国交省は「残る住民の安全も保障できるようにしたい」としている。ただ、段階的な移転を進め、残る世帯に対しても将来的には移転を促していきたい考えだ。
 国交省によると、災害で被災した地域の再建のために集落が集団移転した例はあるが、事前防災のための移転が完了したケースはまだない。