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広島の梶本淑子さん 若者にも分かりやすく 92歳、被爆体験を本に


広島の梶本淑子さん 若者にも分かりやすく 92歳、被爆体験を本に 「14歳のヒロシマ」を出版した被爆者の梶本淑子さん =8月、広島市
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 広島市の学徒動員先の工場で被爆した梶本淑子さん(92)が、自身の体験をまとめた「14歳のヒロシマ」(河出書房新社)を出版した。原爆投下時の様子や平和への思いを、若者にも分かりやすいようにつづった。梶本さんは「戦争はしてはいけない。平和とは何か、家族や友人と話し合ってほしい」と語る。
 1945年8月6日、14歳だった梶本さんは、爆風で工場の重機や工具の下敷きになった。無我夢中でがれきからはい出すと、晴天だった空は薄暗くなり、辺りは魚が腐ったような臭いが充満していた。皮膚が焼けただれた遺体をまたぎながら、負傷した友人らを工場から担架で運び続けた。
 梶本さんは「地獄のようだった」と振り返る。
 本では歯茎から出血が続いた不安や、被爆を理由に結婚を拒まれた経緯を紹介。父を原爆で失い、脳梗塞で倒れた母と幼い弟3人を養った厳しい生活も描いている。
 こうした体験を語るようになったのは70歳になってから。梶本さんは「当時の苦しさは分かってもらえない」と思い、依頼があっても断っていたが、被爆者の話に衝撃を受けた当時中学生の孫娘に説得され、自身の体験を証言することにした。
 戦争や核兵器の恐ろしさを知らない若者も多く、梶本さんは「証言は生き残った者の義務。声が出るうちは、直接伝え続けたい」と話している。
 「14歳のヒロシマ」は四六判で1562円。
「14歳のヒロシマ」を出版した被爆者の梶本淑子さん =8月、広島市