prime

【記者解説】なぜ?玉城知事、国連スピーチで「自己決定権」触れず


【記者解説】なぜ?玉城知事、国連スピーチで「自己決定権」触れず 米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む名護市辺野古の沿岸部。奥は大浦湾=5月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事は18日、国連人権理事会の会合に出席し、沖縄の基地問題についてスピーチした。玉城知事はスピーチで、2015年に翁長雄志前知事が使った「自己決定権」という言葉を用いなかった。

 前回、翁長氏が国連から戻った後、県議会などで「自己決定権とは民族の自決権を意味する言葉。沖縄の人が先住民族という前提だ」などの指摘が相次いだ。

 結果的に沖縄県民が先住民族か否かの議論に論点がずらされてしまい、国際社会への継続的な働き掛けが滞ってしまった面がある。

 玉城知事はスピーチ後、記者団の質問に対して「自己決定権はまだ十分県民の中で議論がされていない。これからの課題」と説明した。まずは県民投票で示された民意に反する新基地建設の強行や基地から由来する騒音、環境汚染などの具体的な権利侵害を訴えることを優先した。

 19日のサイドイベントでは、基地から派生する環境破壊を人権の侵害として発信した。国連総会は22年、クリーンで健康な環境へのアクセスは普遍的な人権だとする宣言を採択し、環境を破壊することが全ての人権の享受に直接的、間接的な影響を与えるという姿勢を明確に打ち出している。

 特に有機フッ素化合物(PFAS)の問題は、全ての人に関わる飲み水の汚染について、汚染源と推定される基地への立ち入り調査さえも認められないという現状は、国際的な基準から見ても、明白な人権侵害と言える。

 今後は、具体的な権利侵害を訴えて、特別報告者の来県調査など目に見える形で成果を残す努力と、並行して、自己決定権の論議も進めて行くことが求められる。
 (沖田有吾)