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「核なき世界」へ30億円 岸田氏演説 研究機関を支援


「核なき世界」へ30億円 岸田氏演説 研究機関を支援 国連総会の一般討論演説を行う岸田首相=19日、米ニューヨーク
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 【ニューヨーク共同=池田快】岸田文雄首相は19日(日本時間20日)、米ニューヨークで国連総会の一般討論演説に臨んだ。被爆地・広島選出の首相として「核兵器のない世界」に向けた現実的で実践的な取り組みを強化すると表明。核軍縮の議論促進を支援するため、海外の研究機関・シンクタンクに30億円を拠出すると明らかにした。国連の機能強化に向け安全保障理事会の改革を訴えた。
 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出には触れなかった。政府関係者によると、中国による日本産水産物の輸入停止撤廃に向け、中国を過度に刺激するべきでないと判断した。
 核軍縮を巡り「抑止か軍縮かの二項対立を乗り越える」と強調。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で打ち出した「現実的なアプローチ」を国際的な議論の主流にするため、研究機関に資金を出し、議論の場となる「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を設置すると発表した。
 国際社会が分断を深める中、人類が共有できる「人間の尊厳」に光を当てた国際協力を訴えた。気候変動、感染症、法の支配への挑戦などにより「世界は複雑で複合的な課題に直面し、各国の協力がかつてなく重要になっている」と指摘した。
 ウクライナに侵攻するロシアについて「国際法、法の支配をじゅうりんしている」と非難した。中国、ロシアを念頭に、国連安保理常任理事国による拒否権の乱用は「国連の分断・対立を悪化させる」と言明。行使抑制の取り組みが「安保理の強化、信頼につながる」と指摘した。国際情勢の変化を踏まえ、常任・非常任理事国双方の拡大を主張した。
 首相が演説で処理水放出に言及しなかった理由に、政府関係者は「首相が触れれば、中国側と批判の応酬になる懸念があった」と説明した。輸入停止措置の撤廃が最優先の課題だとして「対話の環境をつくる方が国益にかなう」と述べた。