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バカ塗りの娘/シネマプラザハウス・公開中/津軽塗がつなぐ家族


バカ塗りの娘/シネマプラザハウス・公開中/津軽塗がつなぐ家族
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 津軽塗の、小さな丸をいっぱい集めたような模様「七々子塗」が菜の花の種をまき付けて作るのだと知り、びっくり。
 津軽塗職人の父とふたりで暮らす娘。ぎりぎりの生活をスーパー勤めで補いながら、心ひそかに父の後を継ぎたいと願っている。だが父の思いが、家を飛び出した兄に家業を継いでほしいと考えているのを知っているから言い出せない。
 画面に映し出される津軽塗の美しさに目を見張り、それを作り出すまでの工程の途方もない多さに驚愕(きょうがく)し、伝統工芸を維持していくことの困難を思い知らされる。
 娘を演じる堀田真由の生きることへの不器用さと、津軽塗への情熱とのはざまでもがく様がいとおしく、もどかしく、好もしい。
 バカ塗りのバカはバカがつくほど丁寧に、根気よくということ。万事大ざっぱな私には向かない仕事だが、あの美しいおわんで頂くお料理はさぞやおいしかろうと、幸せな夢想をしながら家路につく。監督は鶴岡慧子。
 (スターシアターズ・榮慶子)