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対照的あだ討ち2作品/田里朝直没後250年/「大城崩」「万歳敵討」/国立劇場おきなわ


対照的あだ討ち2作品/田里朝直没後250年/「大城崩」「万歳敵討」/国立劇場おきなわ 「万歳敵討」で、万歳芸人に扮して高平良御鎖(右・東江裕吉)へのあだ討ちをする謝名の子(左・嘉数道彦)と慶雲(中央・宮城茂雄)
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 国立劇場おきなわの組踊公演「大城崩(うふぐしくくじり)」と「万歳敵討(まんざいてきうち)」が8月26日、浦添市の同劇場であった。組踊作家田里朝直(たさとちょうちょく)の没後250年を記念し、田里による2題を同時上演した。あだ討ちがテーマの2作品の対照的なラストに、田里作品の奥深さを感じた。
 第1部は「大城崩」を上演した。大城若按司(山崎啓貴)は、父を殺した大里按司をあだ討ちする。大里按司の子どもである虎千代(堀川裕貴)と金松(糸数彰馬)も探し出し、捕らえる。2人への刑執行を止めようとしたをなぢゃら(親泊久玄)は、せめて弟の金松を殺せというが、実の子ではなく継子の虎千代を救おうとした義理深さに感銘を受けた大城若按司は、3人とも放免にする。
 若手の起用が多かった「大城崩」の中で、存在感が光ったのはベテランの親泊だった。実子ではなく継子を救うよう提案する複雑な心境を静かに早まる唱えで表現し、母の思いや強さを感じた。立方指導は親泊興照、地謡指導は照喜名進。
 第2部の「万歳敵討」は、父を闇討ちした高平良御鎖(東江裕吉)に対する謝名の子(嘉数道彦)と慶雲(宮城茂雄)兄弟の敵討物語。2人は万歳芸人に扮(ふん)し、浜下りをする高平良御鎖に踊りながら近づき、敵討ちをする。万歳芸人からあだ討ちに切り替える直前で、謝名の子を演じる嘉数の目つきが鋭くなると、それに呼応するように東江の身のこなしに緊張感が走った。一瞬の高い演技が展開を引き締めた。立方指導は眞境名正憲、地謡指導は比嘉康春。
 「これからは友だ」と敵味方なく共に踊る「大城崩」と、敵討ちの成功を喜んで踊る「万歳敵討」。同時上演で対照的なラストシーンがより強調された。ただ、親や子を思う気持ちはどちらの物語にも通底しており、その表現の豊かさを味わえる構成だった。
  (田吹遥子)

「大城崩」で息子の虎千代(手前左から2人目・堀川裕貴)らが大城の若按司の命で捕らえられ、別れを悲しむ母のをなぢゃら(同3人目・親泊久玄)=8月26日、浦添市の国立劇場おきなわ

「万歳敵討」で、万歳芸人に扮して高平良御鎖(右・東江裕吉)へのあだ討ちをする謝名の子(左・嘉数道彦)と慶雲(中央・宮城茂雄)