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生命力満ちあふれ/てだの会公演/家元の保持者認定記念


生命力満ちあふれ/てだの会公演/家元の保持者認定記念 「初ムーチー」を踊る玉城千枝
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 玉城流てだの会が玉城千枝家元の国指定重要無形文化財「琉球舞踊」保持者認定を記念し、「てだうむい公演」を浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホールで8月20日に開催した。道場開設50年、久米島支部開所35年の節目を迎え、「うむいの継承」をテーマに、2部構成全12演目を披露した。
 第1部は、人間国宝の西江喜春を中心とする地謡による「かぎやで風」の斉唱で始まった。最初の舞踊「稲まづん」は、「師から弟子」「母から娘」へと受け継がれる芸を象徴し、玉城家元の娘・玉城侑香李、玉城家元のめい・又吉聖子が踊り手を務めた。
 玉城家元の「諸屯」は、しっかりとした歩みに、募る女心と、本公演への気持ちの高ぶりが見られた。「諸屯節」では緩急を利かせた動きが、もだえ苦しむ胸中を感じさせたが、「しやうんがない節」では、どこかすっきりとした表情に、解放感さえ感じた。
 玉城家元の姉で、聖子の母である、玉城流いずみ会の又吉靜枝家元が「女こてい節」を披露し、舞台に花を添えた。侑香李と聖子は両家元の十八番芸「加那よー天川」も踊った。
 1部のトリ、玉城家元の「高平良万歳」は、チーグシ(杖串)の先端までも、気の充実を感じた。熟練の間が生む力強い手と、貫くような目力に圧倒された。
 休憩の後、久米島紬音頭保存会が、1988年に玉城家元が作舞した「久米島紬音頭」(平田嗣永作詞、波平作曲)を踊った。
 2部は玉城家元の創作舞踊「久米の島」(波平憲広作詞作曲)や「胡蝶の舞」など創作舞踊を中心に6題を披露した。玉城家元の愛弟子で、重要無形文化財「組踊」保持者の石川直也玉城流てだ也の会会主は、「八重瀬の万歳」で堂々たる踊りを披露し、周年を祝った。 
 最後は玉城家元が、創作舞踊「初ムーチー」(照喜名朝一作詞作曲、玉城家元作舞、幸喜良秀構成)を踊った。子の健やかな成長を願う沖縄の風俗を題材にした作品。初ムーチーができるまでの写実的な歌と踊りに、玉城家元からにじみ出る、子を思う母のぬくもりが、温かい涙を誘った。
 仲むつまじく互いに芸を高め合ってきた玉城・又吉両家元と箏を務めた島袋八重子の3姉妹をはじめ、弟子たちの懸命な舞姿など、演目の端々にてだの会が育んできた琉球舞踊への情熱を感じさせた。温かくもまばゆい「てだ(太陽)」のように、生命力に満ちあふれた数々の踊りに胸打たれた公演だった。 (藤村謙吾)

「高平良万歳」を踊る玉城千枝=8月20日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール

「初ムーチー」を踊る玉城千枝