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性犯罪法案、臨時国会断念 日本版DBS 義務化範囲で異論


性犯罪法案、臨時国会断念 日本版DBS 義務化範囲で異論 「日本版DBS」の主な論点
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は、子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」を創設する法案について、来月に想定される臨時国会への提出を断念する方針を固めた。与党から義務化の対象職種が限定されるなど内容が不十分との批判が相次いだため。義務化の範囲などについてさらに検討を進め、来年の通常国会への提出を目指す。加藤鮎子こども政策担当相が近く表明する見通し。政府関係者が23日、明らかにした。
 日本版DBSは、岸田文雄首相がこども家庭庁の目玉政策に掲げ、小倉将信前こども政策担当相は記者会見で臨時国会への法案提出を目指す考えを表明していた。
 こども家庭庁の有識者会議は今月5日、法案の土台となる報告書案を公表。確認対象は不同意わいせつ罪など、裁判所による有罪判決が確定した「前科」とし、不起訴事案や自治体の条例違反、行政処分を含めることには慎重姿勢を示した。
 その上で(1)学校や保育所に確認を義務付ける一方、公的な監督の仕組みが整っていない学習塾や放課後児童クラブ(学童保育)は任意が妥当(2)加害者の更生も考慮し、性犯罪歴を確認できる期間には上限を設けるべきだ―などとした。
 これに対し、今月7日に開かれた自民党の会合では、出席議員から「職種を広げないと実効性が保てない」「一定期間が過ぎた前科が対象にならないのであれば、過去に性犯罪を犯した人間に無犯罪証明を出すようなもので看過できない」などの意見が続出。こども家庭庁の担当者は「スケジュールありきではない」と説明していた。
 加藤氏は14日の就任記者会見で、今後の法案化作業の見通しを問われ「さまざまな意見を丁寧に伺いながら進めていきたい」と述べるにとどめていた。
 日本版DBS 子どもを性被害から守るため、子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないことを証明する仕組み。英国の制度「DBS」(Disclosure and Barring Service)を参考に、こども家庭庁が導入に向けた法案準備を進めている。ベビーシッター仲介サイトに登録した男2人が2020年、逮捕された事件をきっかけに、子育て支援団体や保護者が政府に創設を求めていた。