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中国禁輸で水産業打撃 処理水放出1カ月 月末にも2回目開始


中国禁輸で水産業打撃 処理水放出1カ月 月末にも2回目開始 東京電力福島第1原発で、海底トンネルに直結した立て坑に流れ込む海水で希釈した処理水=8月24日
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東京電力福島第1原発で、海底トンネルに直結した立て坑に流れ込む海水で希釈した処理水=8月24日
 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まって24日で1カ月となった。初回分の約7800トンの放出はトラブルなく11日に完了。周辺の海水や魚の放射性物質トリチウムの濃度に異常はなく、今月末にも2回目の放出を始める。だが、日本産水産物の輸入を全面停止した中国との対立に出口は見えず、水産業者への打撃が拡大。政府は停止措置撤廃を最優先課題と位置付け、岸田文雄首相と習近平国家主席とのトップ会談を模索する方針だ。
 東電は漁業者らが反対を続ける中、8月24日に放出を開始。計画では処理水を大量の海水で薄め、トリチウム濃度を国の基準の40分の1となる1リットル当たり1500ベクレル未満にして放出する。初回分の濃度は200ベクレル程度だった。2回目も約7800トンを放出予定で、設備点検後、早ければ今月末にも開始する。
 東電、環境省、水産庁、福島県は周辺の海水や魚のトリチウム濃度を分析している。東電が放出口近くで8月31日に採取した海水から1リットル当たり10ベクレル検出されるなどしたが、東電は「安全上の問題はない」としている。
 中国は放出開始当日に日本産水産物の全面輸入停止を発表。中国の貿易統計によると、8月に日本から輸入した水産物の総額は前年同月比で67・6%減った。
 政府は国際会議や首脳、外相会談の場を利用して放出が国際的な安全基準に合致しているとの説明に注力。中国に政策変更を求めるにはハイレベルの対話が必要だとして、11月に米国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などに合わせて岸田氏と習氏の会談を模索する。