有料

「命守るため、日々備えて」 北海道地震、経験伝える 厚真町の山内さん、阪神も被災


「命守るため、日々備えて」 北海道地震、経験伝える 厚真町の山内さん、阪神も被災 北海道地震で大きな被害を受けた厚真町で、地震の経験を伝える現地ガイドを務める山内香さん=8月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2018年9月の北海道地震で大きな被害を受けた厚真町で、1995年の阪神大震災でも神戸市で被災した主婦山内香さん(64)が、地震の経験を伝える現地ガイドを務めている。最大震度7の地震を2度経験した語り部として「『まさか』は起こる。自分の命を守るために日々備える大切さを伝えたい」と話す。
 「地震から土砂崩れまでは6秒です。ある女子高校生は携帯電話を手に持ったまま発見されました」。今年8月下旬、北海道北見市から修学旅行で訪れた中学3年生を乗せたバスの車内で、山内さんが語りかけた。バスは被害の大きかった地区を通り、土砂が流入したダムへと向かう。生徒たちは車窓から地肌がむき出しになった山々を食い入るように見つめた。
 山内さんは「ラジオ関西」(神戸市)の元アナウンサー。阪神大震災は同市垂水区の自宅マンションで被災し、直後から三日三晩会社に泊まり込んだ。「1時間おきに百人単位で犠牲者が増えるのを伝えるのが一番つらかった。すごく悲しい放送をした」と振り返る。
 約10年後、地震の経験から来る心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。15年2月、自然豊かな厚真町に夫と移住し、病気も治りかけた矢先、北海道地震に見舞われた。寝室で大きな揺れを感じ「阪神(大震災)と同じだ」と思った。
 被災後しばらくは体験を直視できなかったが、「逃げていても何の解決にもならない」と、今年、ガイドに立候補。2度の地震で撮影した写真を見せたり、常に持ち歩く防災グッズを紹介したりしながらこう訴える。「自分の身は自分で守る。命を一番大事に考えて」
北海道地震で大きな被害を受けた厚真町で、地震の経験を伝える現地ガイドを務める山内香さん=8月